喜怒哀楽をランニングフォームで表す役者

 久しぶりにどうでもよい日記を(大根監督のチョイ真似^^)。
 「モテキ」第8話だったっけな。「永遠のパズル」をバックに走るフジくんをニヤニヤしながら見てて、思ったんだけれど、この人のランニングフォームは、ほんっと、その時のシーンや心理によって見事に変わってきますよね。同じように全力疾走なのに全然違う。「喜怒哀楽をすべて笑顔で表現する」のが堺さんなら、間違いなく、この人は「喜怒哀楽、さらにそれを超えた第六感?やらなんやらをすべてランニングフォームで表現」してしまう、とっても珍しい役者ではないか、と(笑)。
 
 例えばってことで、彼のランニングシーンを列挙してみますね(すぐに思い出せる分だけだけど)。
 【↓ちょっと追加しました。10になった!(笑)/あ、さらにもう少し追加しました。13になった(笑)】

  1. WB、エンディングのみんなで走るシーン。キラキラ嬉しそう!
  2. やっぱりWB、進藤ちゃん付き添いのもと、お父さんにチケットを届けに行って拒絶されるシーン。帰り道、ゆるい上り坂を走りながら、跳びはねるように、カラ元気のように、でも進藤ちゃんが側にいることが嬉しいのか、バンビのように跳ねながら走ってたよなあ。
  3. そしてもちろん、朔の堤防。亜紀のお葬式の当日。哀しみも超えて、走らないではいられない叫ばないではいられない、衝動の走り。
  4. 朔にはもう一つ、心の中で「あき、あき」って呼びながらお父さんの車を追いかける名シーンが……。あの場面は見る度に間違いなくパブロフの犬状態になります。涙が勝手に流れてくる。心の底の何かに直接作用する。
  5. 朔、まだ有ったよ。空港のカウンターから駆け戻ってスライディング。あのシーンは、現場のスタッフが皆、彼の身体コントロールの見事さに驚嘆したんだったよね…。全力で、直向きに、それでもきちんと心の法を超えないコントロール。その、どこか制御された姿が、絞り出すような「助けてください」に繋がっていく…。すごいよ。
  6. 後は……。あ、アネキか。姉ちゃんをキャバクラで見つけたんだっけ?探すんだっけ?夜の都会の風景の中、だんだん走らないではいられない気持ちになっていく、でも、そんな自分に忸怩たる思いもある…身体全体は使ってるんだけれどとても気怠い走り、スピードも遅め…。勇太郎の迷う気持ちがよく表れてたなあ。
  7. そして、最近では「メロス」。完全に様式化というか戯画化、していて、生身の人間の感情を一旦「活字」と「映像」と「音声」に変換して、それを再度肉体に流し込んだような見事な「走り」。彼の今までのどのランニングフォームとも違う。「走る」ということを戯画に象徴化した、絵画のような「走り」。あれは見事だった。たぶん、あの放送当時に日記にも書いたような気がする。
  8. そして「夜明けのBeat」の走り。これって何なんだろう…、肉体から魂が遊離して走り出したらこうなるんじゃないか、というような「走り」……。人の形は有るのに誰もいない。誰もいないのに魂が有る。だけれどその魂がとてつもなく生々しい。生々しい身体に宿っている、いや宿を借りている…。そんな堂々巡りに陥るような、浮遊し巣くう「魂」、そんなものが「走り」にみなぎっていたように思います。で、それの対極にあるのが……
  9. 冒頭に書いた、「モテキ」第8話の「永遠のパズル」をバックに走るフジ。あれは、もう紛れもない、フジそのものだった。フジ以外の何者でもない、というかフジの自我が塊になってた。フジの赤裸々で自分本位な衝動が走っていた(苦笑)。そう。自分をむき出しに自己完結して走っているので、いつかちゃんのトドメの一撃で、木っ端微塵に砕け散るんだよね…。無防備で情けない。砕けることに救いを見出してるような、歪んだ自己愛に満ちた「走り」。でも妙に愛しい。
  10. 今ふと思い出したのは、「モテキ」第3話のダンスシーン。ダンスを終えて、つなぎをベリベリと破いてもらい、そして走り出すフジ。グーに握った手を抱え込むように大きくふって満面の笑み!ハッピーハッピー。ちょっとお目出度いまでの幸福感が満ち満ちてる♪ 「滑稽」方向に針が振り切れそうな幸福感。これもランニングフォームで見事表現してますよね〜。お見事!(笑)
  11. コメント欄で思い出させてもらいました。「僕たちの戦争」の吾一の走りです。まずは、21世紀に飛ばされて病院で目覚めた吾一が、まさに「遁走」としか表現できない走りで逃げ惑う姿。エスカレーターを逆走激走、フォークを握りしめて戦闘態勢は維持しながらも、素手でコロッケを口に押し込み食欲は満たす。人間の本能がパニックを起こしている様をまざまざと見せつけてくれました。
  12. 同じく吾一の、あの渋谷の真ん中で、「こんな日本を作るために…」と咽びながら右も左もわからず走り出す衝動の走り。あの場面はうろたえながら追いかける樹里ちゃんの走る姿も印象的で、ずっしり胸に響くまさに名シーンでした…。
  13. あと、また今思い出したのは、「はけ口」くん@「被取締役」の走りです…。ラストの、コンペ会場に忘れ物のファイルを握りしめて走る、走る、走る「はけ口」くん。これまでの人生で、何かを賭して走る、誰かのために献身的に走る、そんな奮い立つ経験を待たないで生きてきた「はけ口」くんが、忘我の境地で仲間のために走る…。走り慣れていないので、フォームはぶざまです。オドオドしたまま、おっかなびっくり危なっかしく、でも夢中で走る(涙)。あれは泣けました。あんなフォームのまま一心不乱に走ってみせる……。彼の身体表現の幅を見せつける「走り」でした。みっともないのに美しい「走り」…。胸を打たれたなあ。

 うーん。ほんと、この人の「走り」は雄弁です。考えれば考えるほど雄弁です。
 美しくも、猛々しくも、荒々しくも、風のようにも、不格好にも、気怠くも、迷いながらも、幸せそうにも、おかしくも、おめでたくも、自己陶酔風にも、カラ元気風にも、すべて違った「走り」の表情だ。
 あ、そうそう、自転車でも「喜怒哀楽」は十分表現できてるね(笑)。次はそれ行ってみようかしら?!