新たなグレゴール!@大阪初日

 今帰ってきました。
 大阪グレゴールの誕生です。新しいグレゴール!
 やっぱり大した男です。ただただ感服したりあきれたり(苦笑)。いやいややっぱりほんとすごいや。まいりました。
 
 えっと、まずカーテンコールから。エンディングのご挨拶の後に二回。計三回おじぎをしてくれました。音楽さんは東京とは逆、上手から登場です。グレゴールに笑顔が何度かこぼれました。客席から、ブラボーという声が何度か飛び、大喝采です! そういうと、二回め下手はける時だっけ、袖に入る直前に踵を返し、前列サイドのお客さんに会釈してました(笑)。お知り合い?
 それから、開演前の客席、下宿人が衣装ばっちりでパンフレットをずっと売ってました!汗まみれで。なに?罰ゲーム?(笑)声は出さずにパントマイムみたいにパンフに読みふけってケラケラ笑ったり(マイム)、自分のページを開いてお客さんに交互に見せたり、客席に腰を下ろしたり、パンフの入った籠とお金を通路にぶちまけたり!ともかく頑張っておられました。



 以下は、ざっとの感想です。車中で書いたので、文のトーンが定まってませんが、ひとまず上げておきます。
 ネタバレ、軽く含まれるかと……。
 
 


 グレゴールの感情、また改まっていました。感情と声と動作とがまた全然違う色彩を作り出してた。
 感情のふり幅を最大限にして、身体の細やかなあらゆる神経がそれを引き受けて、全身で物語を紡ぎ出し、舞台の一切を支配し制御する。

 どの一コマで切り取っても、美しいグレゴール。動作の途中であっても、一コマたりとも中途半端な未完成さを露呈することがない。彼には、自分の動きを外から見る目がどこかに備わっているのかしら。。。だってどこを切り取っても見事に絵になるんだもの!

 最後の力を振り絞って部屋に戻ろうとしてぼたりと堕ちた時には、全身がべしゃりと潰れて右足が台からはみ出てしまったし、グレタに、「もう来るな」と言う独白は、自虐と失望に満ちた泣き笑いで心を揺さぶり、それだけに、直後に「ぼくはまだ希望を持っている」と嘯くことばの空しさが際立ってしまう。
 母に寄り添う場面。ひとしきり語った母が、グレゴールの部屋から離れた後、母がいなくなった空間に向かって、より一歩身体を傾けて、まるでポールから顔を出さんばかりにして、聞こえなくなった母の声をさらに聞こうとつかまえようとする姿が有りました。そこまで思いを寄せようとする姿は私は初めてだったので、胸の奥がざわりと波打ちました。

 ぐいんぐいんと動くグレゴールは楽しそうで、窓から外を見て、時々にっこり笑ってはまた真顔に戻る、という有り様で目が奪われる。彼は何を見てるんだろう、彼の目には何が映ってるんだろうね……。凡庸な人間世界を睥睨して、にんまりと冷笑してたのかもしれないね。
 
 凡庸さへの嫌悪、孤独、冷笑……。
 これがいま、私が森山未來の『変身』を見てきて感じる「カフカ的状況」を解く鍵の一つ……なのかも……なんですが、そのことはまた舞台が全部終わった辺りで改めて。