横断歩道

 横断歩道の前のサトエリちゃんの笑顔が本当に良い。あの笑顔を見るだけで涙が出る。
 心の中に蟠るトラウマを、おっちゃんとの再会で洗い流した彼女は、迷いも曇りもない心で慰霊祭へ向かうことができる。横断歩道を渡っていける。
 対する勇治*1、何だか涙を湛えたように見える目で、やめとくわ、今年は、また来年、と……。未来は今の、休憩室で涙していた横顔のようにも見える……。
 その彼を優しく抱擁して、背中をポンポン。まるで姉のように、近所のお姉ちゃんのように、同志を励ますように。
 ありがとうね、と言い交わしながら、キラキラ光る目で勇治を、ちょっと心配そうに見つめるサトエリちゃんの笑顔が、本当に優しくて暖かくて、それだけで泣けてくる。つられて照れくさそうな笑顔で応じる勇治の心が切ない。でも、きっと大丈夫。
 横断歩道のこっち側とあっち側。
 サトエリちゃんがあの横断歩道を、振り返らず真っ直ぐ走って渡るためには、三宮と御影を往復して、おっちゃんと会う、それだけの行程が必要だった。それはサトエリちゃんの道程。勇治の道程は、また別の所に有るんでしょう。一人一人、自分の道を歩くことによってしか、たどり着けない場所があること、そのことを語りかけてるようなシーンだった。
 
 別れてから一人歩く勇治の背後に、「1.17」とライトアップされたビルが見えますね。あのビル、震災報道の時にも見た記憶が有ります。高層で、てっぺんがちょっととんがってる(というか角みたいのが建ってる?)ビルですよね*2。あのシーンも、17日当日の撮影だったんだな……。
 

*1:サトエリちゃん&勇治って、ねじれた呼び方なんだけれど(苦笑)、でも私にはそれがしっくりくるんだよね…。

*2:「関電ビル」ですね。