「リミットー刑事の現場2」第3回

 息がとまりそうになりながら、見終わりました。朝も夜もあまり関係なかったよ…。
 加藤の甘さ、弱さといったら、もう…。これでもか!ってくらいの弱さを見せつけ、そして容赦なく非情な展開を見せるドラマに、痛くて切なくてキリキリします。はあ…。
 
 ストーカー犯は、限りなく自我が肥大して、すべてを自分の都合の良い論理で解釈しようとする。虚言でもなんでもない、彼女と自分は恋人関係なんだと、本気で思ってる、勘違い思い違い自己肯定。啓吾は甘い。同じ論理でストーカー犯を説得できるはずがない。だのに…。
 敢えて証拠を掴んだ被疑者を逮捕しない。
 そうじゃなく、相手の言葉を信じようとして改心させようと必死に説得する。それは、彼を信じられる自分を信じたいがためなのでは?と思うほど、夢中で頭まで下げる始末…。目が充血して神経が張り詰めて、どんな小さな空気や言葉の変化にも敏感に反応してて、痛くて苦しいったらないです(涙)。本気で向かい合って何とか感謝と改悛の言葉を聞き、張り詰めた心を解いて「良かった…」と空を仰いで溜息をつく…。後の展開が見えるだけにその痛々しい姿には参りました…。
 でもその啓吾のひたむきさには、やっぱりどうしても、自分の行為が、信念が間違ってないということを証明したい、それにすがりたいという弱さがのぞいてしまいます。いまの自分は間違っていない、きっといつかこんな自分を、茉莉亜も本気で愛してくれる、そして自分もずっと茉莉亜を愛し続けられる、それを確信したい…。自己肯定の方向に拡大していく、三枝に一脈通じる同じ自意識があるんだな…。そのことに彼自身気づき始めているのが、あまりに辛すぎて、心臓やら胃やらがキリキリする…。
 
 車の中の啓吾。ムキになって愛や人を信じるだのって言葉を連ねて叫んで、茉莉亜は自分を受け入れてくれるとつい吐露してしまって、梅木に徹底的に突き落とされます。「あんたさあ!」と言ってキレかけた辺りから、啓吾の墜落が加速していって、その急降下に息を呑みました…。啓吾の青い弱さをこんな風に情け容赦なく畳みかけることで、三枝の前で感情が決壊することにとんでもにない真実味が加わる。そのドラマの非情さが、また悲しい。
 
 「おれはあんたのことを信じてたからね!」声を上ずらせる啓吾。次の三枝の言葉がとんでもない凶器になった瞬間でした。
 理性も信念も何もかも失って、三枝につかみかかり首を締め付ける。その直前に、ナイフで斬りかかった犯人をヒラリと避けた時のカメラが凄かった…。青白い残映が啓吾の姿をまるで人間じゃない…ムンク「叫び」のように人間の形はしているけれど、息や魂が遊離した「形」に変わる瞬間、ぐにゃりと人格が揺らいだのが目で見えた…。ゾクッと寒気がした。
 その後、梅木にはじき飛ばされて、魂と魄が身体にもどって覚醒した時の、ピンクに上気して目の焦点も定まらず、生まれ落ちたばかりの赤子のような顔で息をしてる啓吾にまた息がとまりそうになりました…。これ、演技なの?こんな表情をさらけ出すのが芝居なの?こんな表現をやってのける森山未來という人に、改めて心臓を抉られる想いです。
 
 それにしても梅木って人はホントに悪魔だ…。
 おぼれかけてる啓吾、岸に指を掛けて堪えてるその指を、引きはがして水中に突き落とそうとする。
 「世の中自分しか愛していないのに人を愛してると勘違いしてる奴が多すぎる」。梅木は自分のこともそうだと思ってるんでしょうね。恋人を救えなかった自分は恋人を本当に愛してたんじゃなかった、そう思ってる。だから「お前も、怒りや憎しみで心が一杯になったら人を殺す奴だ…俺と同じだよ」になる。自分に情けをかけないのと同じで、啓吾にも一切の同情を見せない。それが梅木の答え…。
 そういうと、キレて犯人の首を締め付ける啓吾に向かって、梅木が「そんなことしたら死んでしまう!」って言うんですね。啓吾と梅木の関係が逆転することの暗示でしょうか…。
 
 家に帰り、あの絵が飾られていないことに狼狽してパニックになる啓吾にも参りました。
 あの絵とともに、自分は、自分と茉莉亜は生きられるってことを信じたかった啓吾にとっては、「人間失格」「敗北」の烙印を押されるような、追い打ちを掛けるような衝撃だったんでしょうね…。そんなこと考えてもいない茉莉亜は、昼間1人で梅木のことばと戦って、啓吾との2人の関係をもう一度立て直すために、決意のあげくにそうしたはずなのに、自己否定のどん底にあって茉莉亜の気持ちを彼女の立場で考えられなくなっている啓吾から、「ホントに俺のこと愛してるか?」なんて聞かれてしまう。つらすぎる…(涙)。自問自答して打ち消した問いを、よりによって愛したい啓吾に投げかけられてしまうなんて…(泣)。
 でも、その時の啓吾の目といったら……。涙で充血してキラキラ潤んで……。それでも笑顔を作ろうとする…。肩で息をして、鼓動が上がってるのが、この場面全体を支配して、見てるこちらまで息が上がる…。啓吾の「愛」はなんなのか。優しさって何なのか。優しさゆえのむごさが,啓吾と茉莉亜を引き裂くのを見せられると思わず唸ってしまいます…。
 
 そういうと恋人になる前の啓吾が、茉莉亜のもとに裁判の経緯を伝えに行くときのコートが、「1」の時の新米啓吾のコートだったことが泣けました(涙)。
 
 ドラマ、すさまじい展開になってきました。次回、水中の啓吾。また幻覚?それとも……。
 あと2回しかない、いやあと2回もこれに持ちこたえねばならないというか…。5回、短いけれど長い。たいへんなドラマだ。ここまでとは予想してなかったです。
 みんなすごい。脚本、演出、撮影、そして役者の力でここまで見せていくドラマ。ここに未來さんがいることに心から感謝しつつ、辛くて痛くていろいろ爆発しそうです。


 仕事、行ってきます。上の文章、読み直しできてないなあ(汗)。文章の変なところ、後でちょこっと書き直すことにします…。