劇団ひまわり『オズの魔法使い』@9/27新神戸オリエンタル劇場

 去年、わんだーの会場だった新神戸。一昨年の虹の舞台でもあるけれど。なんだかとても久しぶりの気がする。
 劇場内に入って、あれ〜!こんなに小さな劇場だったんだ…!と一瞬呆然としてしまいました。去年のあの夏の日々、ものすごい熱気と想いとパワーでこの会場に渦を作りながら、新しい旅立ちを赤裸々に踊って見せた、あの彼の姿はもちろんどこにもなくて。地にめり込み、空に躍り上がるような彼の想いに震動していたあの劇場は、初秋の風の中、日常の穏やかな姿を取り戻しているかのようでした。

 さて、27日、その懐かしい劇場にワクワクしながら駆け込んだのは、戦争わんだーの最年少ダンサー、とっても魅力的な踊りを披露してくれていた中西かりんちゃんがこの劇団ひまわりのミュージカルに、客演で出演されるからなのです。一年ぶりにかりんちゃんのダンスが見られる!初めての歌も聴くことができる!かりんちゃんの役は、トト。ドロシーと一緒にオズの国を旅する犬のぬいぐるみです。
 いやあ、驚きました。
 かりんちゃんったら、歌がうまい!!いや、うまいってだけで語り尽くせないなあ。歌声に心がある。台詞がハッキリとこちらの心に届く。狂言回しでもありほとんど主役の働きです。
 声だけじゃなく、表情も、神経の行き届いた身体の動きも、それら全部を伴って歌声が届くんですよ。そこらへん、他の役者さん達となんというか、うん、全然違ってた…です(驚)。
 トトがはしゃいでたり、拗ねてたり、意地悪な気持ちになったり。寂しかったり勇気を振り絞ったり、ドロシーが好き!って心から気づいたり、そして、悲しくても幸せだったり…。そんな気持ちが客席にまでまっすぐに伝わるんですよ…(涙)。昼と夜、2回見たのですが、その2回とも、ラストのトトの独唱では、私だけじゃなく周りの客席みんなボロボロ号泣。 客席には子供の観客もたくさんいたんだけれど、最後、銀の靴を鳴らしてドロシーとトトがカンザスに戻るシーン。家に着いたときに舞台で倒れていたのがドロシーだけなのを見て、「トトは?トトは?」と心配そうな可愛い声が各所で聞こえました。そして、舞台袖から現れたかりんちゃんが、最後の歌を歌い出すと……、もうみんな涙が止まらない(涙)。かりんちゃんの目も潤んでるように見える。柔らかででも力のあるとても良く通る声なんです。心地よい声。嬉しそうに幸せそうに、でも寂しげに涙を湛えてしっかり響く歌声でねえ…(号泣)。
 歌だけじゃなく、台詞の一つ一つも繊細な心の動きを伝えています。戦争わんだーでは一切口を開かなかった彼女だけれど、こんなに素晴らしい役者さんだったんだ〜って、改めて思い知りました。このまま大きな舞台にだって立てるよ、かりんちゃん!!

 残念ながら、ダンスはそんなに多くはありませんでした。というか、トトとして踊るシーンは殆どありませんでした(苦笑)。でも、ちょっとした振付や腰を下ろす動作、その端々に、やはりその長い手足は美しく伸びやかで、ともかくかりんちゃんが舞台にいると、どうしても目が彼女を追ってしまうのよね。


 そう、他の小さな可愛い役者さん達もかわいらしかったです。中でも、カリダスや飛び猿を演じた西尾くんが、とっても元気が良くて動きも大きく、声にも張りがあって断然目を引きました♪ 目もちょいと細くてね〜、ふふ、誰かさんみたいでしたよ(笑)。それと、オズ大王の真理ちゃん、いやあ可愛いし歌も良いし、ちっちゃいけれどパワフル。このキャスティングは絶妙だったなあ。
 もっとも、少々歌がおぼつかなかったり台詞が不明瞭だったりする人も混じりはしましたが(苦笑)、ともかくトトのステキな歌声と演技でフィナーレを迎えるエンディング、は感動の涙でいっぱいでした! ぬいぐるみを抱きしめるドロシーを、離れた場所からにっこりほほえみつつ振り返るトト…。そのおぼつかない立ち姿も、トトの想いを余すことなく伝えてた。優しい歌声を耳で聞き、その涙と笑顔を目にしていると、こちらもただただ涙ばかりでねえ。
 1幕2幕を通して、3時間弱の舞台だったけれど、驚くほどあっという間に時間が過ぎました。不思議、ほんとに不思議。何度も時計を見直したもの(笑)。マチネが終わって時計を見て、4時だと思ったら5時で、魔法にかかったかと思ったわ〜。これも、トトとドロシーが落ち込んだ時間軸の魔法のせいなのかも♪

 心が洗われた気分です。すてきな舞台、どうもありがとうございました!