ビューティ・クイーン・オブ・リナーン(シアタードラマシティ)@1/5ソワレ

 白石加代子大竹しのぶ、この2人が親子となり、いがみ合い傷つけ合う、これが凄まじくならないはずがない!もう、圧倒されっぱなしです。膨大な台詞、しかも憎悪や独占欲や懐疑や騙し合いやらといった、声にも身体にもとてつもない負荷がかかりっぱなしの言葉の山…。
 この言葉の山を全くよどむことなく、感情の緩急自在に、表情もめまぐるしく変化させ(特に白石さんは騙しの演技が入るので、くるくる表情がかわる)、つぶてのように台詞をグサグサと投げつけ続ける。いやあ、お二人ともすごい役者さんです。1人が大竹しのぶなら、もう1人は白石加代子以外有り得ない。逆もまた然り。そういう意味ではまさに必然のキャスティングです。すごすぎる。
 このドロドロした2人の合間にあって、パト役の田中哲司さんが、とーっても爽やかでステキでした。長身で、明るい茶色の髪(クリフ色に少し赤が入った感じ)、男前でした。僕たちの戦争でも正義感溢れる下から慕われる上官役でしたが、誠実で正直な男。ひたすらにオアシスのようでした(苦笑)。
 とんでもないドロドロのストーリー、傷つけ合う台詞の数々、だのにおかしいんですよ。客席からはお腹を抱えて笑う声もあちこちに見られ、ほんとに不思議な世界でした。えっと、もう少し詳しく書いてみたいのですが、ちょっと休憩(苦笑)。晩ご飯食べて、篤姫みなきゃ、12歳の瑛太


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 ということで、瑛太を見た後ちょっと緊張がとぎれてましたが(笑)、残り書いちゃおう。
 それにしても、久しぶりに「はなむらさーん!」な瑛太の笑顔を見たなあ。花ちゃん、結婚しちゃったなあ…。


 で、ビューティ・クイーンです。
 この母と娘、実は少し似た関係を現実に知っていて、私には少々笑えないものがありました(苦笑)。娘を独占し、妨害し、傷つけながらも、自由にならない身体を理由にあれこれと注文をつけ、世話を焼かせ、拘束する。娘に完全に依存しているのに、その娘を貶め辱める続けないではいられない…。娘はその母を憎み、乱暴に扱いながらも、世話は焼き続けている。呪縛のように母に拘束され、時折母に暴力を加えながらも…。
 幸せになりかける娘を徹底的に妨害する母。その母の故意の妨害に気づかずに、わざわざ卑猥な動作などをして、パトと一夜の関係を持ったと嘘をつかないではいられない卑屈な娘…。それが母を苛立たせると信じてその為に嘘をつく。母はその嘘に騙されるふりをし続けるのが我慢ならず、とうとう馬脚を現してしまう。母の悪意の裏切りを知り、ズタズタにされた自尊心を皮膚にぶら下げて、最後の悲劇へとひた走り出す娘。いや、悲劇は最後でもないのかもしれない。周りに悲劇はとうの昔から満ち満ちてたのだし、それはこの後も継続していくのだし…。悲劇の連続性というと、血の婚礼もそうだったね。というか、断ち切れないことこそが悲劇なのかな…。
 有り得ないことじゃない。特異なケースじゃない。アイルランド特有のものでもない。こういう母娘関係、どこでも、現代の日本でも、十分に存在する…。最後の悲劇まで突き進むことはさすがに稀であっても。

 この戯曲を書いた人が、まだ30代の劇作家ということに驚きです。1971年生まれだって…。長塚さんは『ウィー・トーマス』『The Pillowman』に続いて彼の作品を演出するのは三作目とか。
 マーティン・マクドナー。憶えておこう。