東京女子マラソン

 マラソンというものが、ともかく大好きなんですが、今日のレースもすごかった。
 →http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/sports/marathon/?1195388089


 美しい秋晴れの東京、沿道の少し色づいた街路樹、外堀通りの陰翳と坂道、そういった人に近い光景の中、この日のためにトレーニングを積み、北京への切符を賭けた、まさに一発勝負の戦いに臨む女性たち。野口みずきの東京への参加を知り、ライバルたちが次々と出場を見合わせる中、敢えて彼女へ挑戦する選択肢を選んだ渋井陽子。2人の勝負師の真っ向勝負です。
 2人とも、自立した素晴らしいランナー。実績と地力では確かに野口が一歩リードするけれど、渋井陽子の、優等生らしさとはちょっと違う明るい走りは、私も昔から大好きで。
 そんな2人がデッドヒートを繰り広げながら30キロ近くまで。約1時間半です。もうそれだけで私は感動(苦笑)、だって、ここまでのこの2人の日常の練習はどんなに過酷なものだったんだろう、とかいろいろ思っちゃうんですよね…。昔、陸上部だったとき、私はトラックでも短距離以外は走ったこと無かったのですが、一度だけ記録会で800mを走ったことがありました。たった800mです(笑)。最近じゃ女子800mも短距離だろ中距離じゃなく!みたいな感じになってきましたが、やっぱりホントの短距離しか走ったことのない人間が、ぽっと走るととんでもないことになるんです。ほーんとに。たった3分弱(その日のの私のレベル)、まず先に腕が振れなくなる。足はまあそれなりに鍛えてるけど、短距離だのハイジャンプだのをやってた人間にとっては腕が最大の弱点。もちろんその頃は毎日4〜5キロくらいは普通にジョギングしてたし、2キロくらいのインターバルも毎日やってたのに(200mづつくらいダッシュとジョギングを繰り返してトラック一周を2セット、とか。うちの高校が当時練習してたトラック、変則的な500メートルトラックだったもんで…)、それでも記録会で真剣に他校の選手と記録をかけて走ったら、全然だめだった。足は動くのに腕が動かない。2分で根を上げた17歳の私の上腕筋(苦笑)。
 野口さんのゴール。美しい上腕の筋肉に目が釘付け。2時間21分力強く前へ前へと心と体と足を運びつづけ、そして高々とガッツポーズで彼女を誇らかに飾ってあげる、キラキラの美しい腕。。。
 後半の登りに入ってもむしろペースが上がっていく積極的なレース…。ほんとにすばらしい。その日まで走ってきた自分を微塵もごまかさない、本当に素晴らしい姿。誰も彼も、ものすごいトレーニングを積み重ねてこの日を迎えているのに、1回しか無いチャンスにその全てを発揮できる、この人の勝負師としてのプロフェッショナルな姿にひたすら感銘をうけて、ああもう視界が危ういです…。
 そして、14分遅れて、7位の渋井選手…。
 まさに明と暗…。彼女の足は全然動いてない、前に進まない。あんなに白熱のデッドヒートを繰り広げていたのに。
 この2人の明暗を分けたのはほんの小さな「機」のようなものだったんでしょう。ところが、真剣に真っ向からぶつかった2人であればあるほど、潔いほどの明暗がその上に降りてきてしまった…。ゴール後、一言もなく、サングラスをしたままトラックを後にする渋井選手。でも、あんなに足も動いていないのに、2時間35分でゴールしてしまうんですよ、どれだけこの2人が、30キロまで突出した世界的レベルでレースを引っ張っていたかがわかるってもんです。
 後で出た彼女のコメント、「ただの惨敗です」。 一言の言い訳も加えない彼女も、本当に見事だ。
 マラソン界の女性パワー、本当にすばらしい。28歳と29歳ですって…。
 

 野口みずき選手の今回の記録、大会新記録2時間21分34秒だっけ、短めのお芝居一本くらいですね。
 それに匹敵する、いや、それを上回る程の感動でした。一度限りだからこそ得られる感動なんですもんね。
 ああ、人間って、ほんとうにすばらしいや。