WOWOW映像☆ひきつづきのひきつづき(三)

 あまり酔わずに帰って来れたので、下にエントリーした記事以外の感想、ちょっとだけ追加しとこうかな…と。 

 

特典?映像

 本編最後には、渡辺香津美さん特集の特典があります。20分間の充実内容!とーってもおもしろい。興味深い。
 舞台の上でも、音楽家としてそこにおられたことが具体的に一つ一つわかって、ほー、へーって驚くことばかりなんだけど、幾度か、未來さんとのセッションについて楽しそうな表情で語っておられるのが、とても印象的♪「未來」って呼び捨てにされるのも、とっても暖かい。こういうプロフェッショナルな制作秘話みたいなの、大好き!

 登場シーンとしての馬のフラメンコについて、踊りのサイズから、またレオナルドの性格づけから、曲のテンポについて何度もやりとりがあった模様…。もっと速くしましょう、という未來さんからの提案とそれに応えた感想など、とても楽しげに語っておられます。
 なんというのかなあ。渡辺さん、役者森山未來に対峙していたというより、音楽をともに作る相手として、まずはその存在を捕らえておられたかのよう。そんな響きを語りから感じたのは私だけじゃないんじゃないかしら。音楽ライブでのセッションとは違うんだけど…、とわざわざ言いながら、演劇空間で2人の間に流れた空気を、愉快に説明される笑顔を見てると、つくづくそんな気がしました。
 で、カテコのフラメンコを改めて見てみると…、もちろん劇場でもそれは感じたけれど…、それぞれが刻むリズムの中で、2人が絶妙の息で確かにコミュニケーションしておられるのがわかる。放送収録のこの日は、太い大きなリズムで渡辺さんに挑んでる未來さんと、それに軽快に応えている渡辺さん。滞空時間を自在に調節して見事リズムを合わしていく未來さんに、小さな微笑みでOKサインを出すかのような渡辺さん。見事なセッションです。カテコフラメンコは、劇中には封印されていた音楽的セッションを開放した、渡辺さんにとっても貴重な時間だったのかも…。
 なーんて、思ったり思わなかったり、いや思ったり…。

役者さんの表情

 この放送って、劇場中継というよりも、舞台空間を映像作品に改編した、というような仕上がり。劇場で観ていたものとは、ずいぶん違う。別物と言ってもいいくらい。舞台全体をとらえた画像はそれ程多くなく、役者さん一人一人のアップと、絶妙なタイミングで織り込まれる2階からの鳥瞰の映像が、舞台の重層さを効果的に引き立ててるように思う。


 劇場では、ともかく未來さんとソニンちゃんを必死で追うのに精一杯で、映像で初めて知る役者さんたちの細かな表情には驚かされるばかり。思いつくのを散漫に書き留めておくと…

 

  • 女中役の池谷あゆみさん、花嫁が結婚式に出かける前の、別れの悲しみを湛えた表情。それはとてもセンシティブなもので、レオナルドが横切るや、それは厳しい警戒の表情に豹変する。この人も、全身で役を生きておられたんだなあ、とつくづく思います。
  • 花婿の岡田浩暉さん、頬のチークが素朴さを引き立て、善良そのもののような存在。ところが、ところが。森の最後、愛し合う2人を見つけたときの表情ってば…。いやあ残虐な表情で、鬼が突き抜けて悪霊のようになっておられました。宿命に絡み取られたレオナルドに、徐々に近づくときの表情なんってもうもう…レオナルドを殺せる喜びに震えるかのような、闇そのもののような笑いで、背筋が凍ります。「私はもう待ちくたびれた」という黒い男の怨念が下界に具現化したよう…。花嫁を取り戻しに来ていたはずの彼なのに、ぞんざいに、虫けらのように花嫁をなぎ倒す手の迷いのなさに、恐怖が募ります。凍るような笑みを浮かべながら迫る花婿、レオナルドはその網にからみとられた白い蝶のようで…ただただ恍惚の色香をしたたらせながら、覚悟を決めたかのように微動だにしない…。 こんな感想、劇場では到底もてなかったですよ…だって、客席からはどうしても見えないんだもん、この時のレオナルドの顔…。いやあ、すごい、映像!
  • これも言っておかなきゃ!根岸さんの存在感!江波さんの強烈な存在感は劇場でも十分感じてたけれど、根岸さんは、舞台の中の鑑(かがみ)のようだった…。えっと、もちろんレオナルドの姑は、レオナルドに敵対する「土地」側の人間ではあっても、加害のスパイラルに顕著には巻き込まれていない善良さがあるっていうか、なんというか…。うまく表現できないなあ…(汗)。「血を腐らせたまま死んでいくよりはまし」…根岸さんが口にする台詞だけれど、これは、人間関係を相対化する彼女の役割を端的に示しているのかも知れない。そういう意味で「鑑」かな、と…。


 うーん、ほんとにいい映像を残していただいて、ありがたい(涙)。
 未來さん主演のお芝居の映像、なんといってもこれが初めてだもんなあ…。