箱根駅伝

 見ているうちに、何度も涙が出てきました。すごいなあ。一年生から四年生まで、思いは一つ、タスキを繋げることだけを考えてひたすら前へ前へと走る。
 

 またまた、長くかつイタクなってるので、畳みます。



 中継点での選手の表情が素晴らしい。
 緊張の面持ちで中継点に立つ次走者が、上位を競っていても、シード権争いでも、下位チームでも、どこも変わらず、前走者の姿を視界に捉えると、パッと輝くような笑みを浮かべる。前走者は倒れそうになりながらも頼んだぞ!という強い視線を投げ、次走者は、力に溢れる足取りで弾けるように駆け出しながら、前走者の肩を叩いてねぎらって。
 そして、託される思いを受け取る喜びに輝いていた、そんな若い力が、自分一人の道のりに駆け出すや、どんどんと、その日のその時のそのコースの、そしてその人にしか起こらないドラマに直面して行く。何が待ち構えているかわからない空間に、前に進むことしか考えずに飛び込んで行く姿、それを見るだけでもう胸が一杯になる。
 8区の順天堂大学、トップでたすきを受け取ったキャプテン4年生。2位との差を広げてタスキを運んだ1年生を優しく笑顔で迎えた彼に、その後起こったことなんて、いった誰が予想できたろう…。快調に見えた足取りに異変が起きる。意識が明らかに朦朧として表情が無くなる…。蛇行し、対向車線にはみ出しそうになって走る彼を、競技車両から転がり出て、かばうように身体を張り軌道修正しようとする監督*1。その時点で中堅点までまだ5キロもある。見ていてキリキリ心臓が痛くなった。
 個人のレースなら、確実に(ドクターストップで)競技中断だという解説が繰り返される中*2、タスキをかけた彼は止まれない、前に進むしかない、まだ5キロも先の、自分を待つチームメイトのところまで…。とうとう中継点まで数百メートルで2位に落ち、その後2校に立て続けに抜かれ、全く上がらなくなっていた足が、とうとう完全に止まってしまいました。でも立ち尽くしたのは一瞬のこと。ほら、ふらつく足で、引きずるように腕を振って前に進み出す。
 中継点には、早くからスタンバイしてる次走者。走者が駆け込んでくるたびに身を構えるんだけれど、自分の横を駆け抜けるのは他校の選手。でも、とうとう見えました!ふらふらのキャプテンの姿が(涙)。確かに繋がったタスキ。さすがに彼の表情に笑みは無かったけれど、必死の形相だったけれど、でも、つながった…。
 もう、この頃は号泣ですよ、私(苦笑)。


 その後も順位は二転三転。アンカーの姿にまたもや感動。
 1位の亜細亜大学。途中から、もう笑顔を抑えることができないで、喜びに輝いて、走る、走る、走る。一歩ごとにどんどん力が漲って行く☆ 淡々としたピッチ走法で、まるで静止しているかのような安定した走リの彼、それでも途中で足が痙攣していたとのことです。でもそんな気配はみじんも感じさせず、むしろゴール直前のストライドの伸びなんて、美しくてわくわくした。ああ、勝者っていうのは、こんな風に無限の力を一身に集めて行くんだなあと、ただただ感動…。
 山梨学院は連覇をねらう駒澤大をかわしての2位入賞。予選会から勝ち上がっての2位は本当に立派!ポーカーフェイスだったアンカーの彼も、ゴール直前にはこらえ切れずに破顔☆ゴールで待ち構えていたチームメイトが、優勝と変わらぬ笑顔でゴールになだれ込む彼を抱きかかえます。往路のモグス選手の12人抜き、すごかったよね!彼一人のチームじゃないってこと、見せつけました。かっこいいぞ!
 8区で異変の起きた順天堂は、それでも順位を一つ回復して4位でのゴールでした。すごい!えらい!お疲れさま!
 4連覇の駒大は、最後に抜かれて5位でした。このアンカーも、やはり前に進むのがやっとという状態。優勝候補のエースです。去年は、額を軽やかにあげて、鮮やかな大逆転のゴールを切ったというその彼が、今日は空を見上げることができませんでした…。よく帰って来た!なんだけれど、勝負に臨む者の厳しい現実が有るんでしょう。辛いな。よくやった☆ってことばが空を切るのが感じられる…。でも、きっと来年は何かやってくれるに違いないですよね。
 自分を待つチームメイトに向かって、「ごめん」という風に手を合わせて、うつむいたまま崩れ落ちそうになってテープを切る選手がいました。中央大だったかな*3。7区では2位につけていたのに最後は8位。優勝候補の重圧と責任感だったのでしょうね…。
 泣きながら走ってる選手もいる。シードを逃した大東文化。ゴール前から涙を抑えられない。グラウンドコートをかけてもらい両脇をチームメイトに支えられて嗚咽してる。その泣きじゃくる彼の頭に、コートのフードをそっと被せてやった、後から近づいたチームメイトの静かな表情にも泣けました。13位の早稲田も号泣してる。一年生アンカーです。8位で受け取ったタスキと一緒に走ってるのに、どんどんどんどん後続走者に抜かされて行く…。どんなに不安で心細くて辛かったろう。まだ18歳…。でも大丈夫。今年のチームは、山登り、山下り、アンカーと、要所要所に一年生が頑張った。きっと来年はシード奪還できるに違いないから、気にせず遠慮せず、君はどんどん走ってちょうだいね!ファイト!!*4
 で、復路優勝は、なんと法政でした☆往路では17位、それを7位まで巻き返した走りはすごい。

 
 若い力って本当にすごいな。もう、こんなおばさんなんて、臆面も無くそう思っちゃう。
 誰かさんと同い年くらいの学生が、全然違うフィールドだけれど、やはり自分の目標と希望をぶつけて全力を注ぐ。夢中になれることに、ただただ夢中になる。そのことの強さをつくづくと思いました。(って結局また戻って行くのはそこです:苦笑)
 今日一日のできごとを、繰り返すことやり直すことは絶対にできないけれど、今日の前には昨日が確かにあって、そしてやっぱり絶対に明日があるのよねえ。ベタですが、ほんまそうなんやなあ…。経験知を越える事態にも乗り越える自分と仲間を感じるだけで、彼らはどれほどの新たな力を獲得することでしょう。すばらしいな、ほんまに…。

 年頭にあたって、元気いっぱいになりました。エドガーで、また圧倒的な若い力を見せつけるに違いない誰かさんに吹き飛ばされないよう、私もちょこっと頑張ってみましょう。


【余談1】
 相変わらず、兵庫県は駅伝激戦区なんですね。出身高校を見てても、報徳、西脇工といった高校駅伝常連校だけじゃなく、飾磨工、長田、姫路工、なんと加古川東まで出場しておられました。出身地別対抗戦をしたら優勝するんじゃないかしら☆
 

*1:競技者に触れちゃいけない

*2:応援してるはずのご両親、どんなお気持ちだろうなんて思うとヒリヒリした…。

*3:駒沢大やったようにも思えるのですが…:汗

*4:それに、早稲田はここのところずっとシード逃しは常連校(苦笑)。