柔らかい声

 昨日の「天保十二年のシェイクスピア」、3000円也のカラフルパンフの中で、白石加代子さんが、(自分は)身体が柔らかいために強い声が出ない、強い声を出すために身体を凝縮させる、(例えば)スカートの中で一本足になって重心を下げていたこともあって…、というようなことを語っておられます。それを読んで、はあ……と、ひたすら感銘を受けました。
 あの、張りのある朗々とした声、儚く聞こえても一音一音がつららのように胸に突き刺さってから溶けるような、自由自在な声使い。きっとそれは白石さんの天賦の声質なのだと思っていたのですが、見えない所でそのような苦行を自らに課しておられたのですね。
 確かに、昨日の舞台でも、清滝の老婆は腰を低く落として三世次(唐沢さん)に対峙し、それはまるで、あの、ウサギを前に腰を床すれすれに落として咆哮するエドガーさながらで、それを見て胸がギュンギュンなりながらも、ああ白石さんって身体柔らかいんだあ…と思いはしていたのですが…。

 
 未來さんの、ベルベットみたいな柔らかな声立ても、その身体の柔らかさと無縁ではないのかもしれない、なんてそれを読みながら思ったり…というそれだけの話なんだけれど(苦笑)。


 プロ、その中で人の心を掴む存在でありつづけるその背景に、これ以外にも様々な気迫ある日常があるのでしょうね。それはどんな仕事にでも通ずることだろうね。
 文字通り、背筋が伸びる思い。