『バルバラ異界』3

mmooh2005-01-16

    作者:萩尾望都
    出版社/メーカー:小学館
    発行:2004,12,20
    定価:¥ 530
    ISBN:4091670431


これも、実は帰国したら買おうと心待ちにしていました。
私は、漫画はほとんど読まないのですが、萩尾望都だけは別で、全作品、舐めるように読んじゃいます。
ポーの一族』『トーマの心臓』から始まって、最近の『残酷な神が支配する』全17巻まで、一度読み出したらもうどっぷり浸かってなかなか戻って来れません。
残酷な神が支配する』なんてのは、かなり大変なテーマで、読むのむっちゃしんどいし冗談じゃなく肩で息をする気分ですが、単行本化されてからだけでも5回くらい読み返しました。絡めとられる、って感じかなあ。連載中も数ヶ月間えんえんと一晩の描写のみ、なんてことざらだったですねえ。向かい合うの、読者も必死です(苦笑)。それでも読み出したら止まらない、止まれない。
ほんっともう、萩尾望都さん、天才です、すごすぎます。


で、『バルバラ異界』です。これはまだ連載中の最新作だし、この先どう進むのかわからないんだけれど、これがすごいです。系譜としてはSFものなんでしょうね・・・、『海のアリア』にも通じる響きが有るようだったり、どっか『マージナル』なんかにもモチーフが探れるような気もするのですが、テーマがカニバリズムにからんでたりするせいか(カニバリズムは時々現れますが)、血肉と近未来によって構成される独特の世界観が、これまでに無い手触りを生んでます。
ここに出てくるキリヤという少年がいるんですよ。15歳*1。驚異的に身軽な少年で、伝統的なお神楽を美しく何かが憑依するように舞います、でも火星の記憶がある(みたい?)んです、パソコンに自分の空想の逃げ場を持ってるんです・・・これ以上はネタバレになるんで止めときますけど(笑)。
あ、外見はね、黒髪で、特徴的につり上がった大きな目と少し上を向いて尖った鼻をもっていて、きかん気そうな表情なんです。寡黙でつきあい悪いです。でも切ないくらい優しいんです。父(素敵な人です)との関係にどうしようもない原罪を背負っています・・・。
これねえ、いつも私の脳内では森山未來さんが置き換わっています(またかい:笑)。ジーノ少年の和紙に墨が落ちるような綺麗さに翔一君が加わったようなイメージで・・・。


  *
この脱線妄想をもう少し続けると、たとえば『トーマの心臓』で、ミライさんはオスカーかユーリか、って話だったりします。それ以外にも、『メッシュ』のメッシュ(フランソワーズ)ーー父親から愛の裏返しで追われ傷つけられそこから逃げて、「なにもせずに」居候するだけなのに、すごい存在感で皆の心を虜にする少年ーーも、たまりませんね。前髪に銀色のメッシュが入ってるんですよ・・・。
現実感ある話では、『完全犯罪』だったらいますぐ舞台化できるんじゃ・・なんて思ったりして(笑)。ーー俳優になることを目指してダンスを続けてる少年が、たまたま付き人をしてた俳優が殺人事件に巻き込まれて舞台を降板、ダンスの実力を買われてなんと代役に抜擢される。それによって、いやがうえにも殺人事件に関わらざるを得なくなってーーという内容。ちょっとしたサスペンスです。
これミライさん、絶対はまるだろうなあ・・・。妄想、妄想(苦笑)。

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ともかく、萩尾望都作品のすごいところは、前後する作品に細かなモチーフがスターダストのように散らばっていることがその一つでしょうか。『残酷な神〜』だと、『あぶない丘の家』などの「あぶない」シリーズ。ジェルミとイアンの形象が真比呂と安曇に投影されていて、すんごい面白いです。「あぶない」シリーズは、どっちかというとシリアス系じゃなくコミカル系なんだけれど(線も違う)、完成度高くて、義経のとこ(えっとっと『あぶない壇ノ浦』)なんて、マジで号泣です。
こんな風な「スターダスト」タイプの中には、「惑星化作品」とも呼べるようなタイプもあって、例えば、『トーマの心臓』における『訪問者』とかはこれですよねえ。この『訪問者』なんてもう・・・、毎回嗚咽です。ああもうオスカー大っ好き・・・。
これほどはっきりしてなくても「惑星群」化してるのには、ダンスシリーズがあります。『感謝知らずの男』&『海賊と姫君』とか。『フラワーフェスティバル』や『青い鳥』なんかも大きな意味では惑星群と行っても良いかも。恒星がどこかにあるわけじゃなく、重量感が似てて全体として世界を作ってる、し・・・。
いかん、エンドレスになりそうなのでこのあたりで。

*1:ずっと16歳だと思ってたら,フラワーズHPのバルバラコンテンツにある人物紹介に15歳とあった☆