Revival/ヤザキタケシ『不条理の天使/スペース4.5』

 帰宅しました!いやあ。すっごく面白かった!!
 A・B・Cの3プログラム通しで見たのですが、どれもぜーんぶ味が違って、すごく楽しめました!Cプロは、ヤザキタケシさんご自身が3演目全てを踊られたのでもちろん別格!なのですが、A・Bともにダンサーさんによって解釈も演出も異なって見応えがありましたよ〜。コンテンポラリーと聞いてましたが、すごくエンターテインメント性が高く笑いも有って、音と身体とがこんなに不可分のものなのか〜!と改めて再確認ですよ。いやあ、おもしろかったなあ…。思い出しても満足の笑いが出ちゃうくらいです♪
 
 Bプロの未來氏は「不条理の天使」を踊りました。久しぶりに彼のダンスの真骨頂を見た!って感じです。優雅でキレがあり、高いジャンプに美しいつま先、舞台を縦横に使い、おまけにマイムの要素も高い演目だったので、表情も豊か、まるで今にも語り出しそうで……。久しぶりにドキドキと、むせるような思いで息を呑みつつその姿に見惚れてしまいました……。お友達が、後ろの席に座った男性が、「…やるやん…」と思わずつぶやかれたのを聞き逃さなかったとのこと。そうなんですよ、この人やるんですよ〜すごいんですよ〜!ああほんと、こういうダンスを見たかったんだよ!!
 以下、未來氏の出で立ち等々、少々ネタバレしますので(明日も有るしね)、畳みます。
 


  • 髪型はアルトゥルのまま!ウェーブのかかった髪を左から分け、激しく踊るほどに前髪が額に垂れ、いやはや美しいったらないです。あのアルトゥルが、上品なスーツ姿で踊るんですよ!!むせ返りそうな色気と高貴さで……。
  • そうなんです、スーツなんです。
  • 演目解説には、「あらゆるものを手に入れたい」「死生観」……といった文句が並びますが、ともかく或る男が生き、摂取し、働き、人と関わり、そして死ぬ、その連関の不条理さ(或る意味では条理そのもの)をコミカルに踊ります。その為か、この演目のダンサーは、スーツです!未來氏は、青みがかったグレーのダブルのスーツ、ストライプがうっすらと入ってたかな。白いシャツに臙脂のネクタイ。決まってます!!
  • 初っぱなからタンゴ。椅子を抱えて登場、椅子の上に身体を預けて、大きく開脚してキレッキレのタンゴ、決めポーズです!Cプロのヤザキさんの時には入りから赤い照明でしたが、AプロとBプロ未來さんの時は、二度目のタンゴでやっと赤が入りました。いやあ、大きな動作とスピーディーなキレには惚れ惚れ。
  • そうそう、この演目、AプロでもCプロでも、舞台の両袖は通常仕様でカーテンが覆っていたのですが、未來氏のBプロの時のみ、両袖のカーテンが全開になり、舞台の可動域が最大限にまで開放されました!こんなの普通無いよね。いったい何が始まるのかと思いました!でも、広げておいて正解でした。跳ぶ,跳ぶ,跳ぶ!ダイナミックなジャンプと長い視線の距離感とで、文字通り舞台を縦横に使ってましたもん。
  • ともかく、このスーツのアルトゥルはよく食べます摂取します(笑)。最初は普通にフライドチキン?コップの水を飲み、そのコップを食べ(!)、庭の花を摘み、花を両手一杯に抱え(これは未來氏のみ)その花もむしゃむしゃと食べ、ネズミ(というか、パソコンをずっと叩いてるのでそのマウスですかね笑)を尻尾からつまんで食べ、優しく誰かの肩もみをしてあげてたはずなのにその相手すらも食べ(Aプロでは、ここで車?を食べてた)、お腹いっぱいで気分が悪くなって何度も吐きそうになり……(笑)。
  • その後のうたた寝シーン♪ここも三者三様(笑)。未來氏は寝ちゃダメだ意識の強いうたた寝でした(笑)。ヤザキさんは、もっとグダグダに寝てた(笑)。
  • その後が、思いっきりのダンスシーンです!靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ、ネクタイも外し、もちろん上着も取ります!
  • 未來氏もちあじの、優雅で上品で、キレの有るダイナミックな表現が続きます!彼は自分のダンスを踊っていましたよ〜。180度開脚し、つま先はあくまでも地面に水平に。高いジャンプで脚をバレエの様にO脚に曲げ、長い首を優雅に上手に向けてまるで空中で止まっているかのよう!!
  • ほんっと、一切のずるずるした移動途中みたいな瞬間がないんですよねえ。ピタッと止まり、しかもそのどのコマも美しい……。
  • 縄跳び(エア)で二重跳びをし終わって、走りながら縄跳びをする、その時の、蹴り上げた後ろ足の指先までもピンとまっすぐなのが、ティンカーベルのようですよ…。
  • でも、この楽しそうに遊んでた縄跳びの縄で……なんですけれどね(苦笑)。
  • 物語があり、演じることも要求される演目だったので、表情はもうね、顔芸?って言うほど豊かです!目尻に一杯皺を寄せてニーッて笑い、眉根を寄せて困った顔をし、驚いてみせ、満足げに笑みを浮かべ、リズミカルに溜めてはほどき、ほんっと目が釘付けです(笑)。
  • そうそう、時々ふと立ち止まり目線を空に泳がせるのも、いつもの彼のダンスを彷彿とさせて、何だか胸がいっぱいになります。ああ、こういうダンスを見たかったんだ〜〜。
  • 最後は、にこやかに首を吊って厳かな音楽と共に天に召されます(苦笑)。またかい!今回も死亡記録更新中です(笑)。

 他のダンサーさんも、当然のことながら皆さんとても見事でした。
 特に、「スペース4.5」は3プロとも、全く、ほんとに全く異なる演出と振付で、しかも筋は1本同じ骨が通っているのでその違いがおもしろくておもしろくて!Aプロイム・ジョンミさんの凛とした強さを感じる潔いダンスと、Bプロ西岡樹里さんのしなやかで夢のように脈打つダンスと、そしてヤザキさんの、人間そのもののようなうごめくダンスと、すべてステキでした。この演目も、未來氏に踊ってほしかったな〜(笑)。きっと安川先生のダンスのように、この世の者ではないような抽象性を漂わせて踊ってくれたに違いない。
 「世界初演」と謳われた「ミューザー」は、とてもコミカルな音と身体が一帯になった面白い演目でした。踊る本人も音を出します。音に操られているのか音を操っているのか、そのどちらでもあるのか……「音」に身を委ねる感覚に、見ている観客も揺さぶられてね。ああ、おもしろかったな〜〜〜。
 この演目も、やっぱり彼に踊って(音を出して)欲しい演目です(笑)。硬質な言葉を機関銃のようにまくし立てていたあのアルトゥルが、赤ん坊のように「音」のみの世界で身体を委ねて回転し波動を作る……きっとステキだったろうなあ。
 これも、ヤザキさんと、堤真一似の佐藤健大郎さんとで、音の使い方もダンスの組み立ても違ってて面白かった。そうだ、Bプロで「不条理の天使」を踊られた下村唯さんは、舞台上ではちょっと涼太郎くんに似ていて(ロビーにおられた姿は全然違ったけれど♪)コミカルさが増していましたよ。
 私は、明日はもう行けませんが(行きたかったな〜)、行かれる方、存分に楽しんできてください!きっと明日はまた違う解釈のダンスを踊ってくれるような気がしますよ〜!!なんというか、テーマの自由さと認識の共有と、そんな責任をともなう(うまく表現できないのですが)ダンスを見せてくれた彼には、ほんとに感嘆の溜息しかでません。タンゴからたった三日しか経ってないなんて……。