「リミットー刑事の現場2」最終回

 とうとう見てしまいました。終わってしまった。
 取り調べ室に監禁されていた啓吾に息をのんだ。あの場面はすべてとてつもなくすごかった。
 一人で暴れて机を蹴飛ばし投げつけ、放心し…。そして黒川と接触できなかった、と聞かされたときに右の目から流れた、最初の一筋の涙に息が詰まった。あの監禁されていた時間の重みに圧倒された。憎しみと怒りと悲しみで理性を失う様と放心した表情。そして、それが解き放たれて爆発し、黒川へとまっしぐらに向かう感情と身体のうねりと破壊力と緊迫感に、目が釘付けになった。肉体が作り出すあらゆる感情の起伏がドラマの中で一息の一貫した起伏だったのに仰天した。シーン毎に作られた感情じゃなく、ドラマの最初から始まって最後に収斂する、そんな一貫した起伏を表情と身体が作っていた。
 上気して赤くまだらになった顔や、涙やよだれや鼻水や、すべてまがい物は1つもなかった…すべて啓吾のものだった。血すらも本当に流れたものかと思うほど。
 脚本に無理な設定はもちろん有って、特に黒川の超人的な動きには思わず突っ込みたくもなるんだけれど、役者の迫力と、物語を生き抜く姿に、もう細かいことはどうでもよくなります。啓吾の叫びと真っ赤の目に、思わず泣かされてしまいました。やっぱり森山未來はすごいよ。言っちゃいますよ。大声で言っちゃいますよ。
 
 少し残念だったのは、茉莉亜の憎しみが急速に赦しに向かう場面のあっけなさと、梅木さんの繰り返される泣き顔(苦笑)。
 いや、今まではすごい迫力で圧倒されてた梅木の表情なんだけれど、今回だけはは最後の最後まで少し抑えめにしておいてもらった方が良かったかな…。昔のアパートに急行する中で茉莉亜の声を聞く場面なんかは、あんな動揺を見せるよりも、東野刑事くらいのぐっと飲み込む表情の方がよかったんじゃないか、と思います…。あの場面、啓吾の、全く回りが見えずに前に前に向かう姿、茉莉亜の声を聞きながらもそれよりも現場に一秒でも早く着くことしか考えてない、緊迫して何も見えない聞こえない、って感じで転がり出す表情がすごかっただけに、梅木の湿っぽい表情が、少し空気のほころびを作ってしまったような…。あのシーンだけ切り取るならまだそれで良いんだけれど、ドラマは連続してるからなあ。
 それを考えても、啓吾は、物語の中でまざまざと生きる、その表情が物語りそのものをあぶり出していた。表現の息と尺が長い。シーン毎の細切れじゃない。主役だから、彼の感情に併せて作られているから、当たり前といえばそうなのかもしれないけれど、それにしてもすごかった。だって、五回の放送、画面の中にいたのは、紛れもなく加藤啓吾その人だったもの。徹頭徹尾そうだった。

 重いテーマを突き付けられ、正座の勢いで最後まで気を抜く場面が無かったけれど、ラスト、啓吾が小さくチラリと笑顔を見せたのが、梅木が去る場面だったのも印象的だったかな。できることなら、茉莉亜の前で少年のように笑って欲しかったけれどね。助かった茉莉亜を振り返って、嬉しそうに、あのかわいい笑顔を見せてくれれば、別の意味で泣いちゃいましたよ、私は(苦笑)。まあでも、あの屋上の場面でそれは有り得ないか。生きるか死ぬかの場面だったものね〜愛と憎しみ、生と死…。
 お墓参りの帰り、そっと腕を組むのが精一杯の二人というのは、ほんとにNHKさんも酷ですね〜〜。でも、「一緒に不幸になる」ってセリフを言ってて満面の笑顔じゃ、まるで黒川か(苦笑)。やっぱりあそこはあの二人の空気しかないのかもね。ああ、大変なお二人さんだ〜。ふー。
 
 また、感想は明日以降書くかもしれないけれど、今日はこれでこちらもへとへとです。
 ほんとにすごい芝居を見せてくれました。やっぱり最後は、森山未來が一番!なんて思わせられました。ああ、でもほんと見る方も相当力つかいます、このドラマ。でも、もっと見たかったなあ。はあーー。なんか感想がぐっちゃぐっちゃだわ。好き放題書いてるし、私も(苦笑)。
 ともかく未公開シーンも入れて、是非是非是非DVDにしてください!それを祈りながら、今日はもう寝ます。ああ、ほんとにお疲れ様でした。ありがとう。