「未来は今」@NHK

 30分ほど前に終わりました。
 まだ、録画していたものを再生する勇気が出ません。真っ黒になったテレビの液晶画面の存在感がどんどん大きくなっていきます。
 でも、伝わった。いや、なぎ倒された。そんな感じです。
 描かれていたのは14年の時間でした。


 全国放送がまだなので、あまりいろいろ書くことはできないのですが……というより書く力が私に無い(苦笑)。受け取ったものの質量の大きさに、なぎ倒されて今必死にパソコンに取りすがって立ち上がりかけてる…そんな感じです、何も書けないです…。

 
 そこにあったのは、紛れもない、「あの時」と今と、その真実の前にのたうち回り乗り越えようとする、彼の姿でした。
 こんなにあからさまで、かつ無言の表情を一気に見せられることになるとは、想像を遥かに超えていました…。
 ぐさぐさに傷ついて立ち上がった彼の表情が、真っ黒の画面の向こうに焼き付いていて、金縛りのようになります。かと思うと不愉快さに顔をしかめて。でも誠実にそれを言葉にしようと格闘して。

 そして、まるで何かに心臓をえぐられたかのような、苦悩…苦悩なんてことばでは表しきれないです…こんなに七転八倒だとは思わなかった、それくらいの闘い…。
 最後のことばを読み終わって顔を上げたときの、緊張が持続したままの、まるで身体の中で炎がごーごー燃えたぎっているかのような、般若のような決死の形相といったら…、息をのみました。あのことばに、全身全霊をかけた、そんなとてつもない表情で…。
 私、あんな、一歩たりとも引かない覚悟を決めて、燐のように燃えている人を、初めて見たかもしれない…。その形相からストンとこちら側に戻ってきたときの、溜息のように、はかない表情と言ったら…。


 彼の魂が絞り出したのは、すごいことばでした。こちらの魂がどんどんどんどん、彼の声に引き込まれていくのがわかりました。
 三日間の体験の一こま一こま、彼を動かしていく瞬間、そこに反応して変わっていく彼の表情、そしてそれらがパズルのように組み合わさって、ことばの一言一句に繋がった痕跡までが立ち上がるような、とてつもないことばを彼の身体と苦悩が生み出したことに、単純に圧倒されてしまった、です。なぎ倒された、です。
 彼は、あの時と今との間の14年という時間、多くの神戸に繋がる人達の間に形は変えつつも流れたその時間を、自分の血肉にして、身体全体で言語化し、そして見事に語り切りました。すごい。すごい男だよ、森山未來…。
 
 
 だので、イノシシと遭遇しながら険しい山道を登り、一生懸命彼の後ろをついてくる神大の学生さんたちを気遣って「だいじょうぶ?やめよか?」なんて声をかけつつ、それでもてっぺん(?)に登り切って絶景の神戸を見下ろして、照れくさそうに誇らしげにお母さんお手製のお弁当をみんなに配って、美味しそうにそれを頬張ってる姿に涙が出ました。

 
 番組ラストのフィクション部分、やはり啓吾でした。
 で、え?そ、これでラストなの??これまでで、十分モリヤマミライの乗り越えた道のりのリアリティは十分だったのに…。金魚のメタファはわかるけれど、フィクションであるがゆえに、それまでの振り絞るような真実までもがフィクションであったかのように思えてしまう……涙。正直まだあの部分は消化しきれてはいませんが、モリヤマミライがあのラストを認め信じ、そして演じた意味を考えることに、ここは少し時間をかけてみます…。


 とにもかくにも、すごい番組でした。
 実際には茶目っ気たっぷりの、可愛らしい表情やら満面の笑顔やら、心の籠もった言葉に安堵して表情をゆるめたり、そんな柔らかな風もたっぷり流れていて、だので、正真正銘の、未來さんの身体中から、ありとあらゆる感情がほとばしり出ているような、そんな一時間半で、ほんとうになぎ倒されたとしか言いようがない…。
 
 すこししたら、もう一度向き合ってみますが、いまはこれが精一杯なかんじ。