NHK「プレミアム10」

 日記の標題を書き込んだまま、何も書けないでどんどん時間ばかり経っていきます。
 押し寄せるものの前に、指が止まってしまいます。日付もとっくに変わっちゃったな…。

 
 私はあの日、神戸や伊丹や西宮や宝塚や淡路にいたわけではありません。被災された方々が経験された苦しみをこの身に経験したわけではありません。あの日は、当時親元から離れて一人で借りていた小さなアパートでいつもの通りに寝ていました。それでもいきなり今まで経験したことのない様な大きな揺れが襲い、寝ていた小さな六畳間の壁を覆っていた本棚からバラバラッと本やら何やらが落ちてきました。慌ててつけたテレビにはまだ何も映っておらず暫くたって画面に出た各地の震度はとても小さいものでした*1。こんなに揺れたのにおかしいなと思い、時計を見たらまだ6時前。窓の外からは何やら風の音にも似た海嘯のような、ゴーッという音が聞こえました。次に起こされたのは職場からの電話です。慌てて職場に駆けつけて、そこからあの日々が始まりました。13年前のこととなると、あまりに個人的で書くようなことじゃないでも無かったことにはできるわけもない一つの事柄があるせいで、私の記憶はある一角が無音になっています。
  
 でも、番組の最後に彼が言ったことばは、心に深くしみました。彼が信じる音楽の力。
 思いや苦しみや前へ進もうという意思を乗せた音楽、それに匂いが付いていて、それにたまたま触れた人がそこから何かを感じる、そのようであって欲しい…。
 こんな風なことを言っておられたかな。彼自身のことばで語られた言葉を私なりに受け止めるとそうなりました。
 番組で流れた多くの音楽。「しあわせ運べるように」、一生懸命理解して歌おうとする子供達の姿、久しぶりに聞いた五輪真弓さんの歌声、ただただ涙が流れました。音楽って本当に強い。何なんでしょう、この力。台詞だけでは成し遂げられない、人を揺さぶり一つにする大きな力……。未來さんの言葉にその謎を解く鍵があるのかも知れない。音楽に乗せられているのは言葉だけじゃなく、心であり意思。それが魂を揺さぶるのか。
 無音の記憶の中に、音楽を掘り出すことをやってみようかと思いました。でもどうしたらできるんだろう…(苦笑)。


 そんなこんなで日付が変わり、どうやら私の誕生日です。
 さっきメールをくれた13年前のあの日々を共にした友人が、「プレミアム10」の未來さんを見ていたようです。彼の姿を、思考しながら選ぶ言葉たちを、「よかった」と言ってくれました。いまの私には何よりの、とても嬉しいプレゼントです。
 そんな言葉を自分の心から紡いでくれた未來さんに、そしてこの日をまた迎えさせてくれた多くの人々にも感謝しながら、そろそろ寝なきゃ(苦笑)。
 

*1:あとで数回にわたって修正されましたが