6/8マチネ@名古屋市民会館中ホール
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カテコフラメンコの真っ最中に舞台に上がり花束を未來さんに突きつけた、1人の観客の非常識な行動のおかげで、名古屋千秋楽は、違う涙の味を味わう、そんな幕切れとなりました。悔しい。
こんなに悔しく無念な思い、もう二度と味わいたくない。
彼にも味わって欲しくない。
観客には最低のマナーがあるはず。独り善がりの行動でいったいどういうことが起きるのか。
出演者に渡したいものが有れば、会場に預ければいいのです。絶対に、自分の欲望のためだけに、花束だとか贈り物だとかをその場で出演者に渡そうなんて思っちゃいけない。ましてや、舞台に上がってしまうなんて……!
以下、鬱陶しいかも知れないので畳みます。
素晴らしい舞台の仕上がりでした。
演者の方々1人1人の気持ちがしっかり入り、息を呑むフィナーレ。
婚礼の朝、感極まって花嫁よりも先に涙を言葉ににじませるレオナルドや、想いの溢れる臨界点が浮かび上がったかのような、すさまじい森の中のレオナルド、「これのどこが罪なんだ」の直前の、愛に溢れた優しい、そして深い涙のようなキス…。
昨日はこぼれなかった私の涙も、今日は堰を切りました。
1回目のカーテンコール、キラキラの笑顔で優しくソニンちゃんの手を取った彼。少しソニンちゃんの顔をのぞき込むように微笑んで、誇らしげに歩を進める彼に、充実した達成感がうかがい知れるようでした。
私もそれを見て、本当に幸せでした。22歳最年少の彼が、舞台の中心にあって全体の気持ちを一つにしている。その姿が眩しくて、涙が出そうでした。
次の瞬間、その時までは…。
カテコフラメンコが始まりました。
ここから後の彼は、ダンサーとして、舞台のレオナルドによって広げられた引き出しから、森山未來をレオナルドの上に投影し増幅させて踊る、大事な場面です。踊る1人の人間として、渡辺さんと、ソニンちゃんと、プロフェッショナルに舞台の余韻を最高潮にかき立てる、大事な大事な場面です。舞台の付け足しやオマケなんかじゃ絶対にない。
ここまでつとめ上げて彼の公演は完結する。最近、自由な遊びをふんだんに入れて、渡辺さんと一対一で挑み合う彼の姿を見て、その感を強くしていました。この場は、ダンサー森山未來にとって、すごく大事なシーンになってるんだ、と。
渡辺さんがギターをかき鳴らし、皆がスタンバイしパルマを叩き出します。未來さんも手を叩きながら舞台の上で軽快にステップを踏み、そしてカタンとプラットホームにおります。
踊りが始まりました。
ゆっくり手を下から上にメラメラと立ち上げ、タタ!というステップの開始をギターと探り合う、集中力もピークに達したその時でした。
1人の女性が何とスタスタと舞台の上に登っていき、渡辺さんの後ろを平気な顔をして通り抜け、既に踊り始めている未來さんの胸元に花束を突きつけ、そして…降りていったのです。
会場の人が駆け寄ったときには、すでにその人は舞台を降りかけていました。
なんということ!
こんなに非常識なばめん、初めて遭遇しました。
もう一度言います。彼はすでに踊り始めていたのです!
胸元に花束を突きつけられ、驚愕し引きつった表情でその人を凝視した彼。その表情といったら…。ああ、もうその後はあまりのことで私は記憶が飛んでいます(涙)。
いつのまにか花束は、岡田さんが預かり、ダンスは続行しました。
断固として演奏を続けられた、渡辺さんの気迫が、未來さんを再度踊りに誘いました。
もちろん、見事に踊りは進行しました。私の隣に座っていたカップル2人連れは、とても感動して、すごいね☆すごいね!と言い合って大拍手でした。
はい、よかったです。でも…。
踊り終わって腰をついた彼の口元に、悔しげな苦笑いが一瞬よぎりました。
そして、その後、未來さんの表情からは笑顔が消えました
この血の婚礼では好例になっていた、ゆっくりしんがりを歩いてかわいくぺこりとお辞儀をする、そのお辞儀も一度もありませんでした。
何度も繰り返される拍手とカーテンコール。
心の中で私は、「もういい。出てこなくていい。そのままもう出てこなくていいから!」と念じ続けました。でも、繰り返されるカーテンコール。
笑顔を封印した彼。ああ、こんな姿、見たくない(涙)。
いや、でもよく出てきてくれたね…(涙)。ありがとうだね。
最後に、岡田さんに彼が挨拶を振りました。
小さな声で、まだ拍手が鳴りやむ前に、「今日は岡田浩暉からご挨拶します」と言い、一歩前に出た岡田さんがにこやかにとても大きな声で、「名古屋の皆さん、どうもありがとうございました!」と本当に大きな声で叫んでくださり、それに未來さんも俯いて少し笑顔を浮かべました。
その後は、ソニンちゃんもみなさんも、ワイワイ騒ぎながら、とても楽しげに手をいっぱい振りつつ、舞台をはけていかれます。その渦の中で、未來さん、背中を向けて去りながら、手だけを大きくぶんぶんと振りました…。
昨日の、客席にしっかり向き合い水平に手を挙げた彼の姿を見て、いつか、はにかんでいても、私たちの有り難うに答えて小さく手を振ってくれる、そんな日がこの「血の婚礼」の舞台だったらやって来るように思えたのでしたが…。それとは違う、おっきなバイバイ。でも照れたような小さな微笑みを最後に浮かべてくれていたね。ありがとう…。
ああ、これ以上書くと、自分が抑えられなくなるかも知れないので、ここでおしまいにします。
踊ることが彼にとってどんなに大事なことか。踊る彼を見ることが、私たちにとってどんなに素晴らしいことなのか。
それを痛感し、それを蹂躙された、そんな思いです。
舞台は本当に素晴らしかったんです。
未來さんは、今までで一番妻に優しかったし、森の中では大人なレオナルドでした。
素晴らしかったんです。
だから、何もなかったら、きっときっと、昨日以上に笑顔の弾ける楽しい幸せなカーテンコールだったに違いない。大ジャンプもあったかもしれない。それとも何か別に企んでたかもしれない。
それを思うと悔しくて涙が出ます。
今日が最後だった人、今日だけ会場に駆けつけられた人、自分の誕生日のプレゼントに会場に駆けつけた人…。
素敵な舞台だったですね!ね。涙
・・・・・
うん。気を取り直さないと…。しゃんとしないと
残る2公演が、どうかすばらしいものになりますように!!
きっと未來さんはもう気持ちを切り替えてるに違いない。プロだもんな。
みんなとおいしいお酒を飲んで発散して、もりもりご飯を食べて、下駄をからんころん。そのあとぐーすか寝て、またまた新幹線で大移動!
そう。きっと次の舞台に向けて、いろいろ渡辺さんと打ち合わせもしてるかもしれない。白井さんも、容赦ないだろうし。岡田さんの気迫もすごいことになってきてるし、尾上さんの光る目も…。うん、すばらしいカンパニー素晴らしいプロの集団。
すべてをはねのけて、最高の表現をしてくれるはずの、そんな彼に神の祝福を。いやまず、あったかいご飯を!そしてぐーすか寝られる暖かいベッドを!
今日は、ほんとうにお疲れ様でした。