5/19ソワレ(@東京グローブ座)

 理屈はもうどっかに飛んでしまって。
 舞台上の皆さんの感情が、うねってうねって、もう最初から涙腺緩みっぱなしで、自分でも驚いてしまった。
 見ている内に、心臓がすごい勢いで鼓動を打ち始めて、


 すごい…。
 

 舞台の上に、神が降りてるようでした。



 気持ちが落ち着いたら、また改めて色々どこかで整理しないとダメなんだろうけど、ともかく気のついたこと、順不同で。



 たたみます。





  • 冒頭。殺される新納さんに、れいなさんは取りすがってなかった。ぺたんと地面に腰を下ろしてその殺される有様を茫然と眺めていた。取りすがろうとする尾上さん。その行方をすごい形相で三人の女が立ちふさがる。中央にれいなさん。
  • 舞台プラットホームの下手で、だん!と乾いた音で板を踏みならし、断固とした決意の面持ちでソニンちゃんに手をさしのべる未來さん…。その時の目が…。わあ…。キラリと水を含むように光って。キレイで…。ああでも、泣いてるの?
  • 最初の、花婿と花婿の母のシーン。江波さんの迫力と大きく起伏する感情に、初めて鳥肌が立ちました。すごかった。神が降りていた。今日は何かが違う(そんなに沢山見てないけれど)…そんな震える予感。
  • 黒い男と母とのやりとり。上手奥から現れて、花嫁を背後から抱き寄せるレオナルド。その腕の中をとまどいの表情のまますり抜ける花嫁。1人残るレオナルド…。孤。彼には、何も残らない。彼の回りで起こった一連の小さな歴史が、今日は、ストン、ストン、ストン、と落ちてきます。側にかぶせられる、「レオナルドはたった3歳だった」「彼(花婿)には何も言うな」という言葉が、知る者と知らない者、の対比を際立てます。知らない者…。
  • 焦燥のフラメンコ。行き場のない激情。ゆっくり走り出す馬。やり場のない感情を振り払うかのように、鞭を振り、馬の腹を蹴る。足に身体に力をみなぎらせていく…。下手側でのターンも力強く美しく。途中何かを振り払うように上体をグインとねじったときに、大きなラインストーンが3粒、舞台上に飛び散りました。宙に静止するかのようなエビぞりからペガサスの着地まで、とてつもない緊迫感で、息を呑むばかり。こちらの心臓が早鐘のように打ちました。荒れ地を、走らせ、走らせ、走らせ…。馬上で髪をなびかせ露の涙と汗を風に運ばせ疾走する、レオナルドの姿。
  • ねんねんころり、静かにねんねしな。背中に汗が流れてる。タオルで拭くけど、汗はとれず。キレイな背中。
  • 優しい妻。美しい妻。夫への労りの言葉が身にしみます。れいなちゃんも、すごい。だのに、一切感情を表に出さないレオナルド。心ここにあらずで、小麦の仲買人の話をする。まあまあいいところだな…。上の空。馬の蹄の蹄鉄の話、自分の足をさわりながら…。何も聞いていないレオナルド。彼の心には何も入っていかない。
  • 泣くのか。やめてくれよ。有無を言わさず、とりつく島もなく。
  • レモン水。ちゃぶ台返しは無かったけど、上のものを強く意図的に少女にぶつけ。少女は転んでました。
  • その姿を見ても、苛立つ衝動は抑えられない。舞台上手に消えるレオナルド。
  • 泣く妻を慰める姑。後ろをガンガンと怒りの音を立てて登場するレオナルド。何を思ってその2人の姿を見るのか。見ているのは何なんなの?
  • 池谷さんの「あらま」。ほんとに大好き。綺麗な鈴のような声で。メリハリがあってかわいい。とってもかわいい。救われる。
  • レオナルドが立っていた…。現れるレオナルド。舞台上で静止する姿が美しい。くるくる回る花嫁がきれい…。
  • 婚礼の朝。女中さんが「ゆっくり服を脱いで、これからよろしくお願いしま…」くらいまで言えました!
  • レオナルド。白い頬に美しい唇。愁いをたたえた光る目を持つきれいな男…。現れて花嫁の心が大きくかき乱される。罵倒の言葉を浴びせ、怒りを滾らせる、その怒りに紅潮する姿すら美しい…。
  • ここで、花嫁の感情が大きく揺らぎ、何かが切れ、身体を震わせ嗚咽するソニンちゃん。ふくよかな胸元に、感情を押し殺すための、きれいな胸筋がうかびあがる…。すごい。この人もすごい…。
  • その嗚咽を聞いて、自分も泣きたいよね。「心配しないでいい」。今日、このシーンで2回言いました。一度は思いの丈をぶちまけ始めて最初の方。たぶん「俺がそんな男じゃないことは知ってるだろ」の前かな。二度目は嗚咽し震える花嫁に向かって。
  • 花嫁の震えがなかなか止まらず、「婚礼の朝が来た、オレ!」の隊列が登場してきてしまった。大急ぎではける花嫁と花婿がすれ違いそうに。
  • 妻の手は握らず。ただただ絶望の視線を床に投げるレオナルド。
  • 哀しい妻。妻の悲しみに心を添わせるように、そっと抱き寄せるレオナルド。その目は妻を見ていないけれど、手は大きく暖かそうで。抱き寄せられた妻がすがりたくなる気持ち、わかる。自分のためにある手、と思いたい、よね。
  • 宴会の輪に入らないレオナルド。明らかな不協和音。その存在が花嫁の不安をあおる。レオナルドの視線を花嫁が捉え、動揺にうろたえる花嫁。この時の、レオナルドの目が見たい。明日、見られるかな。
  • ダンスに誘う妻。寂しい笑顔を頬に微かに漂わせ、美しく手をヒラヒラと宙に舞わせて、優雅に踊るレオナルド。このダンス、大好き。でも、すぐに少女が2人を引き離しにやってくる。少女に執拗に誘われて、レオナルドから離れる妻。
  • 妻と乾杯。やっぱりほんの少し哀しげな微笑みを漂わせる。レオナルドに何か話しかける華やいだ妻の様子。でもやっぱり少女がそれを引き離しにやってくる。少女に引っ張られて踊りの輪に入る妻。残るレオナルド。視線の先には、花嫁。
  • レオナルドがいないことを、花嫁と花婿に告げに来る妻。レオナルドがいなくなる! その知らせが、花嫁の心に大きな一石を投じたのかも。レオナルドを捜さないではいられない花嫁。家の外に飛び出して、そこで出会ってしまったのね、2人。その場で激しく抱き合ったに違いないよ。ああ、もう、そりゃあもう、2人で逃げないわけにはいかないよ。あなただってそうするよ。
  • 2人は間違っていない。 池谷さんの声。
  • 月に変貌する少女。報復、嫉妬、絶望、おどろおどろしい一切が、尾上さんのぎらりと光る目に象徴されている。この人、すごい。声が一気に太くなる。
  • 何をしているんだ?異形の何かにおびえたように声をかける花婿。その手を取って連れ去る月。
  • 森でお互いを責め合い、かばいあい、求め合い、拒み合い…。激しい感情がぶつかりあって、すごいことになってます。何度も花嫁の言葉を唇でふさぐレオナルド。唇をついばむ音まで聞こえて…。雪崩のように融けていく2人の感情。花嫁を押し倒したレオナルドの顔をなでながら、ああ、なんてキレイなのっていう声が、歓喜と絶望に満ちていて、こちらの涙腺も雪崩のように融けてしまったよ…(泣)。
  • 地面を何度も強く拳で叩きつけるレオナルド。そう。土地のせい(涙)。
  • 服は破けず。根性で強く縫いつけてありました。衣装さんも意地がある?絶対破かさないぞ!って。未來さんとの間に攻防があるとみた(笑)。
  • どの場面だったかな、ソニンちゃんの右足がレオナルドの腰にからみついて、何だかそのまま何かが始まっちゃうのかと、ドキドキしました。
  • 2人を見つける花婿。何をやってる!の前に激しく唇を重ね合ってた2人。花嫁は顔を上げるんだけれど、レオナルドはその花嫁の首や胸に熱くなんども口づけて…。離れたくない、このまま死んでしまったって良い…。何も怖くない。
  • ようやく顔を上げるレオナルド。目の辺りが上気してる。たぶん、泣いてるのね。花嫁も泣いている。泣きはらした目で、レオナルドを制止し、なんとか花婿をなだめようと近寄る花嫁。払い落とされる。立ち上がった目に、ぎらりと光るナイフ。
  • 花婿とレオナルドが、どんどん近づいていく。レオナルドの頬に左手を這わせる花婿。同じように、花婿の頬に手を近づけ。そこで、暗転。花嫁の悲鳴。
  • 葬の場面。現れたレオナルドの妻が目を泣きはらしていて…。もうこの辺りから、私はだめでした。ずっと泣いてしまった。花婿の母が語っても、花嫁が純潔を訴えて取り乱しても、それをただ見つめる女中の目が恐怖におびえても、何を見ても、舞台上を渦巻く空気が、嘆きに圧倒的に支配されていて、どうしようもなかった。嘆きの壁。泣く女。
  • 土地と血。この人達もみな同じ。土地と血が作った人々。
  • 枯れた赤い花びらが舞い落ちる中、現れるレオナルドと花婿。レオナルドの表情が…。ああもうなんてきれいなの、と絶望的に叫ばせてもらいます。もうわけわかんない。
  • カーテンコールのフラメンコ。後ろ向けに列から舞台前に出てきて、スタンと両足でプラットホームに降りる未來さん。皆さんの表情がまだ硬い。花嫁にバトンタッチ。ソニンちゃんも表情がまだ緩まない。そこに合流し、デュエットで踊り、ソニンちゃんに目配せしてほほえみかける未來さんが、とっても優しい表情をしてて、またまたこっちの涙腺が(苦笑)。その優しい目配せに、ついつい笑顔を見せてしまうソニンちゃん。それを見て、一層うれしそうな笑顔になる未來さん。ああもう、2人、ずっとそのまま一緒に踊っていてよ!
  • ダンスの後半、ジャズが入ってましたね!いつもの未來さんのダンスになってた!フラメンコギターに合わせながらこんな遊びが入れられるなんて、やっぱすごいなあ、ダンサーだなあ。
  • タイミングを、渡辺さんとアイコンタクトで交わす未來さん。息がぴったり!バチっと最後決まりました!
  • 舞台に再度並んだ皆さん。笑顔。誇らしげな達成感に溢れた表情の未來さん。すばらしい!ブラボー!
  • 4回目のカーテンコール。立ち上がりたかったんだけれど、何だか圧倒されてしまって立てず。客席の私たち1人1人を目に入れようとするかのような江波さんの美しい視線にも感動。ありがとうございます!って江波さんに言いたかった。すばらしかった。


 
 今日は、本当に本当に、胸がいっぱいになりました。


 神懸かったような舞台だった。
 今日、この日、この場に来られたこと、この奇跡的な舞台を目にすることができたことに、心から感謝します。



 明日、東京楽。