5/5マチネ(&ソワレ)

 カーテンコールのフラメンコは、出演者の方々のためにも有るのかも知れないですね。あの軽やかな楽しいダンスで、最後、みなさんの眉間に入った縦の皺が、やわらかくほぐれていく。今日のソワレの一回目の挨拶時、岡田さんの表情がこれまでで最も険しく、ついさっき怒りに血を滾らせていた花婿の残映を引きずっておられたのね。それが、フラメンコ始まるとゆるゆると表情が和らいで、すっかり爽やかな笑顔になっておられたのをみて、つくづくそう思った。その上、もちろん観てる私たちもほんっとに楽しいんだから言うことないです! 手拍子パルマはとーっても難しいけれど(苦笑)。いつも途中で間違っちゃうよ。


 えっと、さすがにちょっと疲れてるので、少しだけ書き出しておきます。
 念のため、一応畳んでおきます。





 森の中のシーンは、本当に毎日変わるんですね。
 立って抱き合う場所も、覆い被さって口づけする場所も、ひざまずいてすがりつく場所も、全部違う。昼間は下手だったはずの所が、夜は上手に変わってる。心と体に衝き動かされるままに、2人は本気でぶつかり合って求め合ってる。涙流して頬を紅潮させて。
 レオナルドの白い肌が熱情に染まって、とんでもなく美しいです。
 これまで未來さんが演じた中で、レオナルドは間違いなく、最も美しく力強く、花の香りを漂わせ、男の色気と悲しさと切なさを身体全体から溢れさせる人物です。ともかくうっとりするほど、美しく荒々しい…。

 
 婚礼の場で、妻の手を握りながら、じっと花嫁の姿を見つめるレオナルドが、私はたまらなく好きです。
 それまで焦燥感をにじませ、険しい茨の目をしたレオナルドが、美しい花嫁の姿を前に、はたとストンと、とても切なく哀しげな、少年のようなはかない表情になるのです。それが、もうね、とてもとても、哀しいくらいに美しい…。


 そして、フラメンコシーン。野生馬のイメージに重なるフラメンコ。
 圧巻です。
 ことばの形容は不可能。あの板を蹴る音。断固として空気を切り裂いて青白を決す、彫刻さながら微動だにしないポーズの、その一瞬さえも激情の奔流は止まることを知らない。くさびのように鋭く地をえぐる、力強さ、荒々しさ、そしてやはり未來さんならではの躍動感…。狂気と怒気の化身となったかのような荒れ馬。だのに、たまらない哀しい色気があるんです…。


 マチネ、実は数字席で観ることができました。フラメンコを踊るプラットホームの真横です。序奏をつけて踊り始める未來さんの後ろ姿を眺めるという、とても得難い経験。近い!
 ギターの音色が彼の背中を押すと、その身体の節々にすっと光が走るような変化が始まります。枯れた畑に初めて水が通されたように、ワサワサと力がみなぎっていくのが、ピンと背筋を伸ばした後ろ姿から感じられる。レオナルドの心と体を覆っていた鎧がピキッピキッとひび割れて、中から瑞々しくしなやかな青竹のような肉体が姿を現す…。
 瑞々しさ(水)を他者として疎外するアンダルシアの乾燥した空気。花嫁が最後に言う「暗い川のように」「葦を吹く風*1と小鳥の囁き」を運ぶレオナルドは、最初から乾いた土地からは疎外される存在だったのね…。もしかしたら、その一族の血は、アンダルシアという土地が恐れる、水の、風の、緑の香りがする血だったのかもしれない。



 マチネで未來さん、花嫁が装う、オレンジの花と銀の髪飾りを見て血の色が鉛に染まった、というところで、「ぐちゃぐちゃなんだよ、もう!」なんて叫んでましたね。ソワレで確認したら、もっと長くて詩的な表現でした。ま、つまりは「ぐちゃぐちゃなんだ」ということを詩的に言ってるんですけれどね(笑)。ちょっと可愛らしくて、なんだか嬉しくなっちゃいました。
 だって、あまりに格好良くてエロティックで美しすぎるのも、見てる方は意外と疲れるもんなのよ*2


 ソワレは、なんととんでもない席でしかもいろいろ眩しすぎる角度で、目がくらんでえらいことでした。
 そんなあれやこれやは、すみません、明日以降に改めて…。限界…。

*1:うろ覚え。なんだっけ桐ちゃん?

*2:慣れてない…(苦笑)