アントニオ・ガデス舞踏団『カルメン』

 NHK教育で今日放映されてたの、録画していたのでした。チケット到着騒動で、放送中は全然見られなかったけれど、さっき流してみて、びっくり!すごい…。


 姿勢、ぶれません。男性の踊りなんて、ほんとに安定していて、どことなく、陸上のフィールド競技の投擲種目、その助走風景のような、様式化された力強い安定感。ハンマー投げみたく、徐々に高速に回転を持って行くような。どんどん地面にめり込んでいくような、「地」に張り付いているような、そんな踊り…。


 徹底して、男であること、女であることを強調する踊り。
 動物的で、種としての「群れ」が強烈に意識される。その中にあってカルメンは「個」なわけだけれど…。
 存在の不協和音が、足で踏みならす床の音によって確実に高められる脈拍や鼓動、そういう体感的な部分で否応なく実感させられていく。。


 戦いのようなダンスだわ。カルメンという題材がそれを余計に強調させるんだろうけれど、動作の切れの良さや直線的で圧力有る力の方向性に、ともかく息を呑みます。


 ほんとに戦だなあ。フラメンコによる表現って。
 男女が向き合って踊っていても、それはどこか戦いの、挑発の様相を帯びる…わ〜。たいへんだ、こりゃ…。

 
 ともかくですね、こんなフラメンコの激しい要素を、未來さんがとりこんで、そして、森山未來として体内からもう一度生み出すとしたら、いやあ、見るこっちもどんなことになるのか……。これはかなり大変だ。
 未來さんのこれまで見せてこられた、浮遊感や軽さ、跳躍力、天に舞い上がるような、そんなダンスとは対極の踊り、彼の格闘は、倍の行程を経ねばならないのかも知れない。その究極を私たちに見せようとしているのだとしたら……。
 わあ……。
 ……「生身を削る」の意味が、少し分かった気がして、ぞくりとしました……。