『レプリークBis』vol.6 2007-1【感想その2】

 やっぱりすぐに続きは書けませんでした。服のことはもう前回言ったので言わないことにします(笑)。

 今日は、記事のこと。


 長くてとーっても暑苦しいので、畳みます!

 
 この人が新しい作品について語るときは、これまでの自分と作品との関係性、その取り結び方の歩みについて本気で振り返って、一度自分の位置取りを目の前にガタンと丸ごと置き直してから、次の道のりに向かう自分自身を語りだす、そんな、とっても面倒くさい手続きを、往々にして取ることになります。位置取りを定めるためには、時にとても荒っぽくてハラハラするような方法も辞さない。爪に血をにじませて空けたスペースが傷だらけでも、自分がここと思い定めた位置にはどんなに痛くても必ず立ってみせる、そこから足を踏み出してみせる。そんな何だかホントに真剣な七面倒くさい、でもとっても愛おしい作業を、ゴリゴリがたがたと、このような雑誌のインタビュー記事からも感じずにはいられない音をたてて、目の前でやってしまってくれるのですが、それは今回も同じです。

 これがこの人なんだなあ…。だから惹きつけられるんだなあ…。

 でもそれと同時に思いました。どこか、なにかが違うんじゃ…と。


 大学のことを語る口調もさることながら、それよりも、2003年春以降の作品を時系列に沿って俯瞰的に、一気に『メタルマクベス』まで語ってのける、その息継ぎの長さに、ちょっと驚かされました。『最悪な人生のためのガイドブック』が彼の中に果たした役割の大きさ、これはかなり前にも聞いたことがあったんだけど、それすら『最悪〜』後かなり経ってのことだったという記憶があります。それが、その位置取りは揺らぐことのないまま、一気に最新の『メタルマクベス』にまで、自分と作品の位置取りを「たてざま」に語ってのけます。それ故に、その「有りよう」が、この先の未知なる彼自身に脈々と繋がることを、十分に予感させています。力強い。
 「自分の中で、映像や舞台に対する認識が明確になってきたような気がします」(p.74上段)という言葉に、なるほど、と心底納得させられるのも、このような彼の語りを伴うからなのだと、つくづく思ったことでした。そうね、そろそろ、自分で仕事を選んでいく、その時が近づいているのかも知れませんね…。


 そのような彼が語る『血の婚礼』と白井晃さん。この部分は、なんていうんだろう、熱いながらもどこか理性的な響きがあって、ここにも良い意味で驚かされたりしました…。直感が感じ取った本質を、とてもクリアに言語化してるんですよね。「熱さ」や「エネルギー」や「情」も、このような文章で遠くに届かせるのは、相対的でどこか冴えきった脳髄の力にかかってる。文章における理性は、事柄を「遠く」に伝える最も大事な手段だと私は思うので。それを獲得しつつある彼の語り口には(構成したライターさんの力も大きいだろうけれど)、心底、感服しました。

 そうだ、そんで『血の婚礼』。
 まず最初の感想は、白井さんと、本当に意思の疎通が達せられてるんだなあってことで…。二人はそれぞれのインタで、同じことを語ってはいないけれど、確かに何かを共有しているのがよくわかります。
 未來さんは、作品に熱をもたる「楔」が,ロルカの場合「詩」である必然を有していたことについて、それが未來さんの中では「フラメンコ」という表現手段として具体像を結ぶこととともに語ります。そのことと、白井さんが「言葉こそが武器だったロルカの時代」を語る背後に見え隠れする覚悟とは、見事に共鳴しています。また、「何かが過多になってぱんぱんになっている」(p.75中段)未來さんの感覚を、「ピリピリした渇き」と見据える白井さんの視線は、おそらく、未來さんの、自我を支える中枢のさらに精髄部分にある弦の緊張や震えを見逃していない。時間を共有し認識を戦わせた「同志」の言葉だな、と感じました。

 でもね、そんな風にヒリヒリしながら記事を読んできても、インタ最後の、心の整理と部屋の掃除の一段で、ほっと安心させてくれる…。なんだかとても安堵し嬉しくなるプレゼント☆ ともかく、とっても変な言い方だってことは重々承知してるんですけれど、森山未來という人の、人間としてのまごう事なき斜め上方堅持のベクトルーー成長っていってもいいのでしょうーーに、つくづくとしみじみと思いを巡らす、そんな気分になったわけです(生意気な言い方でごめんなさい汗)。

 大学を辞めていなければ丁度いま4年生、卒業を目前にする時期ですよね。あのタテノリからの4年を、もの凄い密度で過ごした若者の底力に、改めて脱帽☆ なんというか、ナイアガラの滝の前に立つような、キラウエア火山の溶岩を見るような、そんな圧倒的な力をヒシヒシと感じてしまいます。


 いや、滝も火山も、両方実物は見たこと無いんですけれど(苦笑)。


 人のこと言えないですね、私もたいてい七面倒くさいなぁ…。最後まで読ませてしまった方、どうもすみません(陳謝)。