『役者魂!』最終回

 こんなにだらだら長く書くもんでしたっけね?日記って…(おずおず)。

 長いので、畳みますばい。




 一週遅れだったり二週遅れだったり時にリアルにと、何とか追い付いて最終回。昨日はちゃんとリアルに視聴しましたよ。見た後、うーんと唸って…。

 この最後の一日に、「これぞ役者魂!」と唸らされたのは、舞台袖の経理くんが「リア王を探せ〜!リア王を探せ〜!!」と、腹の底から朗々たる声でよばわったその声量と、本能寺と別れる間際の瞳美が、「人生は舞台のようなもの…」と目線もキリリと上ざまに語り出す、その冴え渡る美しい喉でした(苦笑)。
 そういうと、社長の身体を張ったアドリブもよかったな。バナナの葉っぱが大活躍、あれは日頃ご愛顧バナナの恩だね。バナッチョ☆ ラストでは今度は護君がバナナを大きな口でモグモグ食べてました…。フジさんは役者にバナナ食べさせるのお好きですね〜。この社長扮するバナナの妖精(?)は護君バージョンも見たかったな。でもそうすると、衣装やら何やらでエドガーが蘇りそうだから、まあ無しで平和でしたが…。
 でもちょっと想像してみましょうかね…。はい、一人の白い妖精が手に持った緑の葉っぱを優雅に舞台上に滑らせて遊んでます。滑る葉っぱを追いかけて、ヒラリと光の雫のように美しく宙に舞う妖精。白い妖精は、両の手を高く掲げて葉っぱに飛び乗ると,さらにその葉っぱと追いかけっこしながら、光のみを残して徐々にリア王に近づきます。まるで月夜に輝く水面を滑るミズスマシのように。その姿を美しく光が追いかけて。リア王を囲む円の半径を,そんな風に徐々につぼめながら、最後にその足下に駆け寄った妖精が、伸び上がってリア王の耳元に小さく言葉をささやき、そこでリア王が覚醒する…。妖精の容姿は、先週の『ルックアットスター』巻末「ポラプレゼント」の、頭かいてる王子様でお願いします☆

 ……すんません、我を忘れてました、まったくもって訳の分からぬ妄想だ(自嘲)。しかしね、ドラマ見る度に、妄想的に「そこになかった映像」「見られなかったシーン」を脳内で展開させねば、見終わった後の気持ちが収まらないんですよねぇ(苦笑)。おや瞳美の妄想癖、完全に伝染しちゃったか?!


 いや、妄想はさておき、んんー、この最終回の舞台、これアリですか? シェイクスピアに魅了され、家族も顧みず人間関係も捨て置いて、舞台に一路突き進んできた老俳優の、何十年にもわたる役者人生最後の一日、それをこんな有様にしてしまうことに、一体何の意味があったんだろう?としばし沈黙…。
 もちろん、ドラマにとってリアリティがすべてとは言わないけれど、ここまで個人的感情に任せて芝居を台無しにしちゃう役者さんというのは、どう考えても有り得ない。セッティングに潜んだ瞳美の、台本を閉じて始まった心の台詞が本能寺を突き動かす、そのクライマックスシーンを導くための設定だったのは分かるんですよ。でも、あれだって、松たか子さんという役者の口から出るからこそギリギリ成立はしたものの、普通の女優さんがやってれば、「ありえねえ〜!」って非難の嵐ですよ。あんな囁き声で離れて立つ役者に明瞭に声が伝わるなんて、まあ、お松さんならあり得るかもな、と思うからそのまま見ちゃうんであって……(苦笑)。これに止まらぬ、キャストのリアル役者魂!無しには成立し得ないシチュエーションの数々が…。

 そうなんだな、このドラマタイトルが私を惑わすんだな。

 わかってます。オープニングタイトルで浮かび上がる「役者魂」を背負った人々の群れ。このドラマが謳う「役者魂」とは、職業としての「役者」に用いる狭義のそれじゃなく、最終回で瞳美が宣言したように、誰もが人生という舞台で役者を演じねばならないという、その人間としての尊厳を示さんとするものだってこと。
 でも、やっぱりね、中心人物が頑固なシェイクスピア俳優でしょ*1、舞台が元演劇青年が興した芸能事務所でしょ、おまけに、揃いも揃った実力派俳優さん達でしょ。いやがおうにも、この役者陣が丁々発止の台詞劇を展開し、神がかり的な間(ま)とリズムで芝居をぐんぐん牽引していくに違いない、そう思ってしまったわけです。
 いや、それはそれで間違いなかったんですよ。物語の本筋らしき家族模様の、500倍ものスピードで、役者陣の演技は言葉と身体の間隙を埋めつつ、まるで命が宿ったかのように世界を形作り怒濤のようにうねり、それにすっかり魅了され、おお☆このシーンをずっと見ていたいぞ!と祈らせられ……ところが瞬く間にその疾風は凪いで…。切り取られた映像の向こうにはずっともっと長く続いていたであろう、リアルな役者魂!のぶつかり合いを、見たいのに見せてもらえない…そういう宝物の破片ばかりでできあがった1時間。公式サイトにワクワクするような舞台裏が紹介される度に、そっか、私たちはそれを見せてもらえないのね…とシニカルな笑いが浮かび…。いやあほんとに贅沢なのやらもったいないやら(嘆)。
 でも。君塚さんって、もっと視聴者の気持ちがわかるんだと思ってましたよ(毒)。


 あ、護くんは良かったです。
 気負った風が全くなく、自然で肩の力を抜いているかのよう。本当はどうだか知りません、もちろん。私たちは演じられた結果しかわからないし。でも、当初、少し斜に構えたクールな現代っ子加えてボンボン、ちょいとデリカシーにも欠けちゃうかな☆の護くん、それが徐々に人の生き様にもコミットする(まあそれをマネージャーという職業で具現化させようとしたんでしょかね)、そんな濃ゆいパッショネイトな表情をのぞかせていく。もしかするとそれは熱い親父の血の再生だったりするのかもしれないけれど、それを獲得していく。そしてとうとう、柳沢社長の生き写しになっちゃうのよね(笑)。そんなふわりと浮いてどちらにも稼動がかかるような、ホバークラフトのような位置取りを、見事、ゆるやかに表現しておられました。「ゆとり」というと語弊があるかも、なのですが*2、大きな引き出しをするりと開けてそれをパタンと閉じた、そんな風にぼんやりと思えました。


 何かが変わりつつある、のかもしれませぬ。
 

付記

 そうだ、書き忘れ(笑)。
 「失礼します!」で、ぐぐぐっと瞳美を抱き寄せた護くん、むちゃくちゃ格好良かった。何とも言いようのない困り声で、「僕も泣きたいですよ…」「あの子達にはかなわないなあ…」って呟くのも良かったでっす。そこでもらい泣きしそうになっちゃった(照)。それと忠の泣き顔が、泣きポイントでした。お鼻を真っ赤にさせてポロポロ泣くんだもん(涙)。かわいいなあ、忠…(泣)。

 ほんと、役者さん、みーんな良かった。大人も子どももみーんな。
 だのに?(苦笑)
 
 

*1:後半これに大きな疑問符が点灯したけど

*2:2年版前,泉谷さんが,未來さんを「余裕のねえやつ」と賞賛したのが,ふと思い出されたり…。