歌舞伎・顔見世@京都南座。

 12/22に行ってきました。
 今回の顔見世は、中村勘三郎襲名披露公演のおおとりに当たり、ともかくチケットの確保の段階で、ぐったり力尽き…。それでもなんとか、22日の昼夜通し狂言の切符を手に入れ、3階ですが最前列に陣取り、美しいきらびやかな世界にうっとり酔いしれてきましたよ。

 確か、今日が千穐楽。今日もすごいんだろうなあ。

昼公演

 昼は、最初の演目「猿若江戸の初櫓」。これが楽しかった!
 ちょいと前座的な位置ですが、なんといっても勘太郎七之助兄弟と愛之助さんが登場されるので、実はかなり楽しみにしていた演目です。

 単純な芝居、顔見世らしい踊り主体の演目ながら、もうもう勘太郎さんの踊りのうまさと表情の豊かさにすっかり魅了されてしまいました。中村屋さんの歴史でもある猿若一座の誕生にまつわる一時を、おめでたく明るく表現する踊りの数々、ともかく勘太郎がすべてを圧倒するんです。身体能力の高さ、ころころ変わる表情、特徴有る衣装を存分に生かして、板を踏みならす音も大きく寸分の狂いもなく。見ているうちに、ただただ楽しく嬉しく、ほんとに見事な舞でした。その姿たるや、後に登場の勘三郎丈の、技量と風格が確実に引き継がれていることを実感させ、一種感無量になるほどの誇らかな姿でした!
 しかし、なんと言っても圧巻は、勘三郎の襲名公演でもある義経千本桜の二作「道行初音旅」と「川連坊眼館」です!
 いやあ、勘三郎(まだついつい勘九郎さんと言いそうなのですが)、51歳とは思えぬ身のこなしと跳躍力、ほとほとその身体能力には参ってしまいます。
 狐が化けた佐藤忠信がその役柄。コミカルで軽やかな身のこなし。狐ですから、思いもよらぬ場所から、飛び出たり、飛んで姿を消したり、天井から鮮やかに回転しながら登場したり、そういうアクロバティックな動きも優雅でホントに「音一つ無い」! さらに、その狐が親を思う気持ちを切々と訴えながら哀しく舞う姿などは、もう涙無しでは観られません(涙)。
 何度も衣装を替え、早替えなのですがお衣装がぼってりとしたホンモノの絹の見事な刺繍やら羽二重で、いったい中はどれほど暑いんじゃろう…。しかし、そんな様子は微塵も見せず、軽やかに一糸乱れず姿を刻々と換えていく…。歌舞伎役者ってすごいなあ。ひたすら呆然。

 この身のこなし。あのとんでもない身体能力の彼が身につければ鬼に金棒だろなあ…などと妄想しつつ。(お決まりの妄想ですんません)

夜の部

 夜の部は、勘三郎の襲名披露口上が目玉です。そうそう、仁左衛門も出てるんですよ!
 昼の部で書き忘れましたが、先の「川連坊眼館」で、義経役の仁左衛門が舞台奥の絢爛豪華なふすまから姿を現すと、ホントに誇張じゃなく、客席が「お〜〜〜!」というどよめきに包まれます。美しいんですよ、キレイなんですよ。参りました(笑)。

 でも、私はなんつうか観てるだけで美しい人より、動きの目を引く人、動作に切れのある人、そういう役者さんが好きなんだなあ〜と実感(苦笑)。勘三郎勘太郎のラインの方がぐぐぐっと私のツボを突きましたぜ。

 ま、それは良いとして(笑)。

 実は、夜の部にはもう一つサプライズが有りました。いや、知ってる人にはサプライズでも何でもないと思うのですが、夜の部には、2代目中村鶴松という、可愛い可愛い10歳の少年が出演していたのです。

 なんといいましょうか……。
 天才少年! ストレートにその言葉が真っ先に出て道を譲りません(苦笑)。

 最初に鶴松くんが登場した「京鹿子娘道成寺」。一人だけ、ちっちゃな坊やが小坊主さんの姿でちょこんとお坊様方の列に混じってます。ああ、可愛い子ね(笑)。ってニコニコ観てました。よくある、歌舞伎の子役さん、お人形のようにかくかくと動いてほほえみを誘う、そういう役回りだろうな、と思っていたんです。

 ところがどっこい、いざお坊さん達の群舞が始まるや…………、目がその少年に釘付けです!
 動きの美しさ☆確かさ☆なめらかさ☆優雅さ☆力強さ☆、いえいえどうして、並み居る大人の歌舞伎役者さんたちに、まーったく!ひけをとりません。いやそれどころか………むむむ、動きのどの部分をとっても、きれいなんです〜、すべて決まるんです〜!しかもとーっても楽しそうに踊っていてね…。感動して、私はもうもう泣きそうでしたばい。
 この演目では、もちろん白拍子花子を踊る勘三郎さんが押しも押されぬ主役です。その勘三郎さんが次から次へと衣装を替えて艶やかに舞を重ねていく様子を、横で見物する僧達の列に、その少年がちょこん混じってるのですが、鶴松くんは、その勘三郎さんのすばらしい舞を、身動き一つせず、じーっと小首をかしげて見続けてるんです。ああ、この子、ほんとに踊りが好きなんだなあ……。その姿を見てまたまた感無量(苦笑)。


 実は、歌舞伎ファンの間では、既に天才子役として有名だったらしい彼、去年、勘三郎さんの部屋子になり*1、本格的に歌舞伎役者になるべく修行中だとのお披露目がありました。その時、口を開いてくれましたが、またよく通るいい声なんです。勘三郎さんご自身の部屋子とは、よほど才能を見込まれたんだろうな。

 最後の演目で、鶴松くん、とうとうソロで(変かな?歌舞伎でこんな言い方:苦笑)踊ってくれました。
 「乗合船恵方萬歳」。縁起を担いだ、おめでたい演目です。鶴松くんは、子守おつる役。女の子です。小さなお人形をおんぶして姉さんかぶりをして、それだけでもう泣いちゃうくらい可愛いんです(嬉)。ところが前の人に促され、一人舞台中央に進み出ていざ彼が舞い出します。首を少しづつかしげて動作を決める、難しそうな動きにも迷いがなく、床を踏むならす音も清々しくはっきりと響き、一人前の、立派な役者です。ああ、天才って、必ずこうして生まれてくるんだなあ…。ただただ見とれるばかりでした。

 トリに踊ったのは勘太郎、この踊りもすごく立派で、なんといっても表情が豊かです。楽しいんです! うーん、中村屋さん、すばらしい跡取り息子と、頼もしい小さな後継者を擁し、その誇らかな有様、ほんとに襲名披露の晴れ舞台にふさわしく、最後まで拍手喝采でした。


 あまりに感動したので、帰宅してから中村鶴松くんを調べてみたのですが、どこでも大絶賛ですね。去年の2代目鶴松襲名披露では、振り袖に袴姿でご挨拶をしたとか。その姿を想像するだけで涙ぐむ勢いです(照)。

 
 ジャズダンスが得意な、あの妖精のお兄ちゃんに続いて、鶴松少年、俄然注目の的になっちゃいましたよ(笑)。
 といってもまだ小学生だし(苦笑)、彼がしょっちゅう舞台に立つ訳にはいかないかもしれませんが、是非是非次の舞台も観てみたいなあ。
 頑張れ!少年!!!夢に向かって、日々邁進だ!

*1:一般のお家出身なんだそうです